LC-MSイオン導入細孔の電圧設定


サイエンス出版部 発行書籍

質量分析屋の高橋です。お仕事でLC-MSをお使いの方で、イオン導入細孔の電圧設定を意識しておられる方はどれ位いらっしゃるでしょうか?イオン導入細孔は、ESIやAPCIなどの大気圧イオン源において、大気圧で生成したイオンが真空領域に入っていく時に最初に通過する細孔です。      図1 ESIソースの概略図   図1をご参照下さい。   メーカーによって名称は異なり、cone, orifice, transfer tube, heated capillaryなどと呼ばれています。その後に続く差動排気部にイオンを送り込むために、数十V程度の電圧が印加されています。イオンを後ろから押す所謂リペラー電圧的な役割を果たしますが、その電圧の最適値は、イオンのm/zに依存します。その依存性というかイオンのm/zによってどの程度最適電圧が違うかは、メーカーや機種によって異なります。メーカーや機種毎にデフォルトの設定値があり、多くの化合物はデフォルト設定値のまま測定してもそこそこのシグナル強度が得られますが、極端に分子量が小さい、あるいは大きい化合物については、そのイオンを通すための最適値がデフォルト値から大きく外れる事もあります。 最近の多くの装置では、このイオン導入細孔を含め、複数の関連するパラメーターをオートチューニングできる機構が備わっていますが、その際にチューニングの対象とするイオンのm/zを設定できるようになっていると思います。 オートチューニングを使っても勿論良いですが、オートチューニングを使うまでもなく、この電圧をちょっと変えるだけでシグナル強度が劇的に変わる場合があります。より良いLC/MS分析のために、この辺りも一寸意識して使ってみて下さい。  

著者: 髙橋 豊

髙橋 豊

このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。

バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長

【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)

【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞

【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段

【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)

【HP】
エムエス・ソリューションズのホームページ
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