マススペクトルを得るための測定モードは必ずしもスキャンではない!


サイエンス出版部 発行書籍

質量分析屋の髙橋です!今回から、質量分析計本体について、色々と書いてみたいと思います。現在最も普及している質量分析計は、GC/MS, LC/MS, その他全て合わせても、四重極質量分析計(quadrupole mass spectrometer, Q-MS)でしょう。Q-MSの動作原理は、様々な書籍で紹介されているのでご存知の方が多いと思いますが、簡単に解説します。   図1にQ-MSの概念図、図2に質量(m/z)分離の原理を示します。        図1 Q-MSの概念図    図2 Q-MSにおけるm/z分離の原理 図1に示すように、4本の電極のそれぞれ対角線の対の2電極に対して同極性の直流電圧と高周波電圧を印可し、周期的に極性を変化させることで、イオンは4本の電極内に閉じ込められ、イオン源から検出器までを振動しながら飛行します。図2に示されている三角形様の図は、安定領域と言って、直流電圧と高周波電圧の大きさにおいて、どの位の電圧の時にどの大きさのm/zのイオンが安定に四重極内に存在出来るかを示しています。安定振動領域にあるイオンは検出器へ到達し、安定振動領域にないイオンは途中で四重極外へ排出されます。また図2に示すように、直流電圧と高周波電圧の比が一定になるように電圧を変化させることで、イオンのm/z を分離する事が出来ます。 ここで、図2に示した両電圧を、走査直線上に小さな電圧から大きな電圧に連続的に変化させると、小さなm/zのイオンから順番に四重極を通過して検出器に到達し、マススペクトルが得られます。電圧を連続的に変化させる事を走査(スキャン)と言います。 一方、GC/MSやLC/MSで定量分析を行う場合、選択イオンモニタリング(selected ion monitoring, SIM)と言う測定法が用いられます。これは、特定のm/z値の

著者: 髙橋 豊

髙橋 豊

このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。

バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

全文を読むにはログインしてください。(登録無料)
髙橋氏への質問も各記事ページ下のコメント欄から投稿できます。

【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長

【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)

【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞

【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段

【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)

【HP】
エムエス・ソリューションズのホームページ
アメブロ