ELISA だけに頼ると失敗するかも
サイエンス出版部 発行書籍
新しく抗体を作るときに、目的の抗体ができているか見極める評価法をどのようにされますか。一般的には、免疫原として利用した抗原とは異なった材料を評価に用いるのがよろしいです。 例えば、ペプチドをキャリアたんぱく質に結合して免疫原とした場合、抗体が思った通りできたかは、天然のたんぱく質あるいは組換たんぱく質をイムノブロットして調べるなどです。すなわちこの場合は、免疫原にペプチド、そして評価法にはたんぱく質(ポリペプチド)です。 ただし、モノクローナル抗体を作るときは、スクリーニングと 評価は同時進行となりますから、結果が早く出ることが必要です。イムノブロットではハイブリドーマの増殖に追いつかず、せっかく出来てきたクローンを取り逃がしてしまうことが多々あります。 このようなときは、評価法もペプチドを固定化した ELISA に頼らざるをえません。 また、ポリクローナル抗体を作るときでも、たんぱく質を調製、電気泳動してブロッティングする手間を考えると、簡便な ELISA で済ませてしまいたくなります。 しかし、免疫原に用いたペプチドに対して抗体ができてくれば、同じペプチドを固定化した ELISA で調べて当然だろうという考えは必ずしも通用しないのです。免疫原のペプチドに対する抗体は必ずできてきます。 しかし、ペプチドの配列を含むたんぱく質にこの抗体が結合するとは限りません。ELISAでは抗体価が十分上がっていても、イムノブロットなどで調べたときにバンドが出ないことがよくあります。この結果をどう解釈するかというと、一つの可能性は、抗体がペプチドの末端を含む配列を認識している場合です。免疫原に用意したペプチドがたんぱく質の内部配列のときは、実際のたんぱく質では合成したペプチドの両方向に配列が伸長しています。 したがって、ペプチド末端に対してできてきた抗体は、伸長した配列
著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)