ELISAの定量性について


サイエンス出版部 発行書籍

私が酵素抗体法(ELISA, Enzyme-Linked Immunosorbent Assay) と出会ったのは大学院博士課程に在学していた1970年代後半の頃でした。 本郷キャンパスの医学部生化学教室には、附属病院から学位取得のために研究をしに訪れるお医者さんが何人かいて、木村吉雄先生もその一人でした。     木村先生は、筋ジストロフィー症の原因たんぱく質の一つと考えられていたカルパイン(当時私たちは CANP: Calcium-Activated Neutral Protease と呼んでいた)の筋肉内定量を目指し、筋組織抽出液中に存在するカルパインを ELISA で調べる実験を進めていました。 ELISA の定量性を検証するために、私は粗抽出液をイオン交換カラムで分画しカルシウムイオン依存性のタンパク質分解活性を調べるとともに、カルパインを電気泳動で二次元展開して木村先生のお手伝いをしました。 今になって考えると、私がたんぱく質分解に生涯関わることになったのは、この実験がきっかけだったかもしれないと感慨深いものがあります。 ELISA は、酵素標識した抗体を利用して粗抽出液中の抗原量を見積もる方法で、それほど煩雑な実験操作なしで結果が得られます。標識酵素としてはアルカリホスファターゼやペルオキシダーゼがよく用いられます。 酵素の代わりに放射性同位体で標識する方法が RIA(Radioimmuno Assay)、蛍光物質で標識するのが FIA(Fluoroimmuno Assay) です。ELISA による抗原量測定では、サンプル数をこなす必要があるため、反応を96穴マイクロタイタープレートで行うことが多く、比色測定はマイクロプレートリーダーが便利です。 96穴プレートの底に始めに何を吸着させるかによって幾つかの方法があります。 目的の抗原に対する抗体

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN