低分子物質の抗体をつくるときは
サイエンス出版部 発行書籍
抗原性はあるが免疫原性をもたない低分子物質をハプテンといいます。なるべく多くの人に読んでもらいたい文章を書こうとするとき、このような導入法は NG ですね。冒頭の一文にある専門用語のうち一つでも理解しがたい言葉があったときは、続けて先を読む気がちょっと失せ、2つ以上あれば中断します。数多ある書物の中、ごくわずかのベストセラーが存在するのは、内容、書き方、それから世に出るタイミングが合致したときなのかなとつくづく感じます。 さて、最初の文に戻りましょう。ここで抗原性とは、産生された抗体と結合する能力を意味します。反応原性ともいいます。 一方、免疫原性は、動物に投与したときに免疫系を刺激する力、すなわち、抗体を産生したり T リンパ球の活性化を誘導する能力をいいます。 ここで単純に考えると、抗体を産生する能力がないのに出来上がってきた抗体と結合するなんて、そもそも抗体をどうやって作るのかという疑問が生じます。 実は、ハプテンを大きな分子にくっつければ抗体産生を誘導できるのです。大きな分子としては、軟体動物由来のヘモシアニン(KLH; Keyhole limpet hemocyanin)がよく使われます。低分子物質の抗体を作るときに免疫原性を獲得するための足場のような役割をするたんぱく質をキャリア(たんぱく質)と呼び ます。 ハプテンとキャリアの結合は基本的に共有結合がおすすめです。複合体形成の際にハプテンの抗原性に影響がないように工夫する必要があります。 例えば、ハプテンとしてペプチドを用いる場合、ペプチドの末端にアミノ酸を付加して、このアミノ酸の側鎖とキャリアを共有結合させます。結合には架橋剤が使われます。 ペプチドとたんぱく質を架橋する試薬は、アミノ酸の末端あるいは側鎖同士を結合させることになり、様々な架橋剤が手に入ります。官能基としては、リシンあるいは末
医学系国際学会における英語ポスター発表をサポートします 。
オーファン受容体研究におけるリガンド探索や新しい疾患代謝経路の解明に:Greenpharma ヒト内在性リガンドライブラリー
著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)