エピトープマッピング
サイエンス出版部 発行書籍
大きなたんぱく質に対してモノクローナル抗体を作成したときは、その抗体が抗原のどの部分に結合するかを知りたいものです。抗体が結合する抗原の部分構造を抗原決定基あるいはエピトープといいます。たんぱく質(ポリペプチド鎖)が抗原となった場合、エピトープの大きさは数アミノ酸残基ほどとも言われています。 これは構成するアミノ酸の種類にも依りますし、隣接部分の状況にも影響されるので、エピトープとなるペプチドのきっちりした長さを示すことは難しいです。 例えば、ポリペプチド末端がエピトープとなっているときは、短くて3残基です。 また、リン酸化チロシンに対する抗体では、周辺の配列に関係なくチロシンがリン酸化されていれば結合するので、1残基ということになります。なお、同じくリン酸化されるトレオニンやセリンについては、これら1残基がリン酸化されたものを識別する抗体を作ること自体が難しく、周辺の配列を含んだエピトープとなります。それでは、モノクローナル抗体がたんぱく質を抗原とするときに、その抗原決定基を絞り込む方法(エピトープマッピング)について簡単に説明しましょう。エピトープマッピングは幾つかの会社が委託解析をおこなっており、ご自分で実験する機会はあまりないと思います。方法は大きく分けて2つあり、合成ペプチドを用いる方法と分子生物学的手法を利用するやり方です。モノクローナル抗体ですから、抗原となるたんぱく質が特定できていない場合もあり、このときはランダムペプチドライブラリーあるいはファージディスプレイを使うことになります。抗原となるたんぱく質が特定されていれば、遺伝子の配列に基づいてオープンリーディングフレーム(ORF)を翻訳し得られる、たんぱく質の一次構造が基本になります。まず、わかりやすい、抗原が特定されている場合です。ORF の配列から数残基〜10残基のペプチドを一部をオーバーラップ
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著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)