ポリクローナル抗体のエピトープ解析


サイエンス出版部 発行書籍

ポリクローナル抗体は、幾つものモノクローナル抗体が混ぜ合わさったものですから、わざわざエピトープマッピングをする意味がありません。しかし、抗血清をあえてエピトープ解析すると面白い結果が得られます。抗ユビキチン抗体の例を紹介しましょう。   ユビキチンは76アミノ酸残基の小さなたんぱく質ですが、生物種間での配列保存性が高く、純度の高い市販品が手に入ります。これをウサギに免疫して抗血清を取得します。76残基の配列を15残基前後に分割して一部をオーバーラップさせたペプチドを用意します。10個ほどのペプチドです。 これらペプチドをキャリアたんぱく質を介してニトロセルロース膜に固定し、ドットブロット法で段階希釈した抗血清を調べます。結果は、 C 末端と中ほど部分のペプチドが比較的強く染まり、その他はうっすらとスポットが見えます。これが何を意味するかというと、2箇所の部分がエピトープになりやすいということです。 すなわち、このような実験データを積み重ねていくことによって、エピトープの推定が可能となるわけです。大きなたんぱく質でも ORF から抗体ができやすい領域を推定し、良い抗体を得ることができるわけです。溶液中のたんぱく質がどのような構造を取っているかで抗体の出来やすさはある程度予想できるので立体構造情報は重要です。そして、エピトープ解析を始めとするウエットな実験結果が裏付けしてくれると、予想の確度は高くなります。詳しくは拙著『抗ペプチド抗体ベーシック』をご覧ください。

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN