聴覚の謎を解明!体外で「生きた蝸牛」を観察する画期的な技術が難聴治療に光
私たちは、なぜささやき声から音楽の繊細な音色まで、驚くほど幅広い音を聞き分けることができるのでしょうか。その驚異的な能力の鍵を握るのが、内耳にあるカタツムリのような形をした「蝸牛(かぎゅう)」という小さな器官です。しかし、この器官は非常にデリケートで体の奥深くにあるため、その働きを生きたまま詳しく調べることは長年の課題でした。この難問に生涯をかけて挑んだ研究者がいます。2025年8月に亡くなられたロックフェラー大学のA・ジェームズ・ハズペス医学博士(A. James Hudspeth, MD)です。博士と彼の感覚神経科学研究室のチームは、その逝去の直前、世界で初めて蝸牛の微小な断片を体外で生かし、機能させたまま維持するという画期的な技術的進歩を成し遂げました。 この新しい装置によって、蝸牛が持つ並外れた聴覚能力(卓越した感度、鋭い周波数チューニング、広範囲の音強度を符号化する能力など)の生体力学(バイオメカニクス)をライブで捉えることが可能になったのです。「私たちは今、これまで不可能だった制御された方法で、聴覚プロセスの最初のステップを観察できるのです」と、共同筆頭著者であり、ハズペス研究室の博士研究員であるフランチェスコ・ジャノーリ博士(Francesco Gianoli, PhD)は語ります。 この革新的な技術は、最近発表された2つの論文(それぞれ『PNAS』誌と『Hearing Research』誌に掲載)で詳述されており、ハズペス博士が50年にわたり取り組んできた聴覚の分子的・神経的メカニズム解明の集大成です。彼の洞察は、難聴を予防または回復させるための新たな道を照らしてきました。2025年7月14日に公開された『PNAS』誌のオープンアクセス論文は、「Amplification Through Local Critical Behavior in th
Life Science News from Around the Globe
Edited by Michael D. O'Neill

バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill





