糖尿病性下肢虚血の新治療—Netrin1エクソソームが血流改善と組織修復を促進

糖尿病性下肢虚血の新治療—Netrin1エクソソームが血流改善と組織修復を促進

サイエンス出版部 発行書籍

糖尿病性下肢虚血の新治療法—Netrin1を含むエクソソームが血流改善と組織修復を促進 糖尿病の重大な合併症の一つである糖尿病性下肢虚血(diabetic limb ischemia)の治療に向けて、新たな細胞療法が開発されつつあります。この疾患は、足や脚への血流が減少することで慢性的な痛みや潰瘍を引き起こし、最悪の場合、非外傷性の下肢切断の主な原因となります。糖尿病性下肢虚血の患者は、心血管疾患のリスクが20~30%高く、非糖尿病患者と比較して切断のリスクが14倍にも及ぶと報告されています。こうした現状を打破すべく、上海交通大学附属上海第九人民病院(Shanghai Ninth People’s Hospital)血管外科の研究チームは、新たな非侵襲的治療法を開発しました。 この研究は、2024年10月23日にAdvanced Healthcare Materials誌に掲載され、論文タイトルは「Netrin1-Enriched Exosomes from Genetically Modified ADSCs As a Novel Treatment for Diabetic Limb Ischemia(糖尿病性四肢虚血の新規治療薬としての遺伝子改変ADSCからのネトリン1濃縮エクソソーム)」です。 エクソソーム療法の可能性 研究チームは、幹細胞を用いた血管疾患治療に10年以上取り組んできました。しかし、幹細胞治療には免疫拒絶反応、腫瘍形成リスク、倫理的課題、細胞の生存率の不安定性といった多くの障壁がありました。そこで、細胞そのものではなく、細胞が分泌する「細胞外小胞(EVs)」を活用する新たな治療アプローチに着目しました。 エクソソームとは? エクソソームは、細胞から自然に放出される小型の膜小胞で、タンパク質、RNA、脂質などの生理活性分子

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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