MITが光を利用した「トラクタービーム」デバイスを開発
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちは、映画「スター・ウォーズ」に登場するトラクタービームを彷彿とさせる、細胞を捕捉し操作することができる小型のチップベースデバイスを開発しました。このデバイスはDNAの研究、細胞の分類、病気のメカニズムの解明など、生物学や臨床研究の現場で応用が期待されています。手のひらに収まるほどのサイズで、シリコンフォトニクスチップから放射される光のビームを使って、チップ表面から数ミリメートル離れた場所で粒子を操作することが可能です。この光は生物学実験で使用されるサンプルを保護するガラスカバーを貫通でき、細胞を無菌環境に保つことを可能にします。
従来技術を超える新しい光学ピンセット
従来の光学ピンセットは、光を使って粒子を捕捉・操作するため、大型の顕微鏡装置が必要でしたが、新たに開発されたチップベースの光学ピンセットは、よりコンパクトで大量生産可能かつ高スループットのソリューションを提供します。これにより、生物学実験での光学操作が手軽に行えるようになります。
しかし、既存の類似デバイスは、チップ表面に非常に近い位置でしか粒子を捕捉・操作できませんでした。この制限により、チップが汚染されるリスクや細胞へのストレスが生じ、生物学実験との互換性が制限されていました。
今回、MITの研究者たちは「集積型光学フェーズドアレイ(integrated optical phased array)」と呼ばれるシステムを用いて、チップ表面から100倍以上離れた位置で細胞を捕捉・操作する新しい方法を開発しました。
研究チームと成果の詳細
研究の筆頭著者であるタル・スネ博士課程学生(Tal Sneh)を中心としたMITの研究チームには、ジェレナ・ノタロス博士(Jelena Notaros, PhD)、サブリナ・コルセッティ博士課程学生(Sabrina Corsetti)、ミリカ・ノタロス博士(Milica Notaros, PhD)、クリティカ・キッケリ博士(Kruthika Kikkeri, PhD)、およびジョエル・ヴォルドマン博士(Joel Voldman, PhD)が参加しています。この研究成果は2024年10月3日に「Nature Communications」で公開されました。論文のタイトルは「Optical Tweezing of Microparticles and Cells Using Silicon-Photonics-Based Optical Phased Arrays(シリコンフォトニクスベースの光学フェーズドアレイを用いた微粒子および細胞の光学ピンセット)」です。
今後の展望
チームは、光の焦点を調整可能なシステムの開発や、複数の捕捉点を同時に活用したより複雑な操作を目指しています。この技術は、さまざまな生物学的システムに応用可能で、疾病診断の感度向上にも役立つと期待されています。
画像:このチップベースの「トラクタービーム」は、強く集光された光線を用いて、細胞を傷つけることなく生物学的粒子を捕捉・操作するもので、生物学者が病気のメカニズムを研究するのに役立つ可能性がある。(Credit:サンプソン・ウィルコックス、RLE)



