個別化医療を目的とした臨床試料を用いた臨床バイオマーカー探索のグループ

個別化医療を目的とした臨床試料を用いた臨床バイオマーカー探索のグループ

サイエンス出版部 発行書籍

このコラムの初めの頃に個別化医療に関して説明しましたが、個別化医療で重要になるのは科学的に患者さんを層別でき、最適の薬を選べる遺伝子やタンパク質などの診断マーカーです。癌の領域では他病気の領域よりも診断マーカー(腫瘍マーカー)が少し進んでいると思われますが、患者個々人で病気の状況も異なるので、個別化医療には程遠く、また癌以外の病気(感染症を除く)では診断マーカーが殆ど無いのが現状です。 そのため、医療現場では現症診断にまだ多くを頼っており、遺伝子やタンパク質などの分子レベルで、ターゲットを予想して科学的に開発された医薬品の間に、まだまだ大きな谷があります。そのためには何が必要なのか。私は臨床の現場で起きている病気の現症を遺伝子やタンパク質などの分子レベルで解明し、それに合った最適な診断マーカーを病態組織や血液などの臨床資料から探索することが必要になっていると考えています。 アメリカでは2015年の年頭のオバマ大統領のPrecision Medicineの開発に大きな予算を出すと発言してから、癌治療を目的としたCancer Moonshot Projectが数年前から始まっており、臨床試料を用いたゲノムやプロテイン解析を利用した個別化医療に向かっています。 そこで、私たちは日本でも病態組織や血液などの臨床資料から患者さんを層別できる、診断マーカーを探索し、個別化医療に結びつけるシステムに取り組んで、今年の7月に癌治療の個別化医療を目的とした診断マーカー探索の組織を構築しました。  このグループは私たちのベンチャー企業の(株)Spectro Decypherと(株)Biosys Technologiesと、日本医科大学が中心になってできたCancer Biomarker NETwork(CaBNET)が共同で臨床バイオマーカー探索を行う組織です。  私たちの組織の体制

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)