イムノブロットあれこれ、その 2. サンプル調製と保存、いかに抗原性を保つか
サイエンス出版部 発行書籍
生体サンプルを SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけて膜に転写し、抗体で解析することは多々あると思います。このイムノブロット法は、抗体を活用するための基本的方法のひとつですが、難しいと敬遠される方もおられます。それは、実験操作の煩雑さだけでなく、何箇所か失敗しそうなステップを通らなければならないからです。それから自動化が難しいことも理由の一つです。 昔、ブロッティングが大嫌いな同僚がいて、当時は抗体ではなくてエドマン分解用のサンプル調製でしたが、電気泳動後のアクリルアミドゲルをすりつぶしてトリプシン消化していました。今ではプロテオミクス実験法として確立していますが、トリプシン消化物をそのまま HPLC にかけて分取するので、カラムがあっという間に劣化し、ほぼ使い捨てという感じでした。 皆さん、転写するところは気を使うようです。せっかく電気泳動したサンプルをブロット膜に転写したら泡だらけでまともに移ってなかったり、あるはずのバンドが全く見えないというトラブルはよくあります。気泡を避けるためには、ブロット用バッファーをたくさん使いますが、セミドライではなくてウエットタイプの転写装置が良いです。 しかし、セミドライとウエットタイプでは転写の条件を変える必要があり、ブロット用バッファーに SDS を加えると、ゲルからのたんぱく質溶出効率は上がりますが、ブロット膜でへの保持が低下してバンド消失に至ることもあります。 それから、転写後は一度たんぱく質パターンを染色してみることをお薦めします。テフロン系の PVDF 膜ではクマシーブリリアントブルー(CBB)、ニトロセルロース膜ではポンソー S で染められます。詳しくは拙著(抗ペプチド抗体実験プロトコールまたは抗ペプチド抗体ベーシック)をごらんください。意外と軽視されがちなのがサンプル調製の段階
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著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)