このごろ商標デザインをはじめ各分野での盗用を耳にします。少し前には研究のスキャンダルが一般社会へ漏れ出て大騒ぎになりましたね。ここでは、抗体は知的財産として確立するか、いいかえれば抗体を盗作してはいけないかという話を簡単に解説します。なお、私は法律の専門家ではないので、つきつめたところの判断はできません。

 

そのときは弁護士をやっている大学の同級生に相談してみます。結論から言うと、いまの技術では抗体のパクリは、厳密にはないと考えています。理由は抗体ができる過程をたどるとはっきりしてきます。免疫原としてもちいる抗原は作成者が考え、あるときはペプチド抗原などをデザインします。
ところがその先のステップで必ず、動物に抗原を投与します。ここはその動物まかせで作成者は介入できません。

モノクローン抗体の場合は、抗原で感作した動物から得た抗体産生細胞を不死化し、目的の細胞を絞り込むスクリーニングがありますが、ポリあるいはモノどちらの抗体も実験動物が抗体を作るわけです。 それからもうひとつ大事なことは、免疫原と抗体の結合は一義的ではないということがあります。抗原ペプチドをどれだけしっかり考えて作っても、個々の動物、そしてひとつひとつの B リンパ球が作る抗体は、抗原には一見同じように結合するかもしれませんが、そのアミノ酸配列は同一ではないです。このことは意外と皆さん見落としています。

たとえば、特殊抗体を作ってモノクロ化、その可変領域の配列が判明したとします。同じ抗原に結合する抗体を改めて作っても可変領域の配列は再現されません。それぞれの抗原抗体複合体の立体構造を調べてみると配置はよく似ているという具合です。すなわち動物は、ひとつの抗原に対して幾つもの配列の抗体を準備できるということです。本来、外敵に対抗するための抗体ですから、このような危機管理の仕組みがあって当然かもしれません。科学技術がまだまだ本質を極めてない一例です。 抗体作成について人間は、その製造過程を説明できないレベルであり、できあがったものの知財権を主張するようなことはやめておいたほうがよろしいです。

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