MASHにおけるTREM2+マクロファージの重要性:線維化の進行を抑え、炎症を軽減する可能性。
かつて非アルコール性脂肪肝炎(NASH)として知られていた「代謝機能障害に関連する脂肪性肝炎(MASH)」は、肝臓の線維化や炎症を特徴とする病気です。MASHは肝硬変や肝癌のリスクを高め、治療法が限られているため、アメリカでの肝移植理由としては慢性C型肝炎感染による肝硬変に次いで2番目に多い原因です。この疾患の進行メカニズムの理解が、効果的な治療法の開発には欠かせません。
サンフォード・バーナム・プレビス研究所、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部などの研究チームは、MASHにおける異常な肝細胞とマクロファージ(白血球の一種で、有害な細胞や病原体の除去と正常な治癒を促進する役割を持つ)の複雑な相互作用について、2024年8月22日にPNAS誌で発表しました。この論文は「Lipid-Associated Macrophages’ Promotion of Fibrosis Resolution During MASH Regression Requires TREM2(MASH回帰中における脂質関連マクロファージの線維化解消促進にはTREM2が必要)」と題されています。
研究概要と主要な発見
この研究の上級著者は、サンフォード・バーナム・プレビスのがんゲノム・エピジェネティクスプログラムのデバンジャン・ダー博士(Debanjan Dhar, PhD)であり、共著者には同研究所の社長兼CEOであるデビッド・ブレナー博士(David Brenner, MD)とカリフォルニア大学サンディエゴ校の細胞・分子医学教授であるクリストファー・グラス博士(Christopher Glass, MD, PhD)が含まれます。第一著者は同大学とサンフォード・バーナム・プレビスのポスドク研究員であるソウラディプタ・ガングリー博士(Souradipta Ganguly, PhD)です。
研究者らは、MASHが進行する場合と回帰する場合で関与するマクロファージの多様性が異なることを発見しました。特に、TREM2を発現する特定のマクロファージ亜集団が、MASHおよび肝線維化を解消するために重要であることを明らかにしました。肝線維化は、傷ついた組織が血流を制限し、臓器全体に悪影響を及ぼします。
「MASHでは、肝臓内に存在するクッパー細胞(マクロファージの一種)が失われ、4つの異なるマクロファージ亜集団に置き換わります。特に回帰段階では、2つの脂質関連マクロファージ亜集団が優勢で、これらは細胞の生存や増殖、抗炎症反応を調整するTREM2を発現しています」とブレナー博士は説明します。
TREM2+マクロファージの役割と治療への可能性
TREM2+マクロファージは、MASHの進行を抑えるだけでなく、炎症を軽減する効果も持ちます。一方で、TREM2+マクロファージが欠如すると、MASHは進行し続けます。
アメリカ肝臓財団によれば、推定8000万から1億人が脂肪肝疾患に罹患しており、そのうち1.5~6.5%がMASHに移行するとされています。このため、TREM2+マクロファージが新たな治療ターゲットとなる可能性があります。
ダー博士は、「TREM2を発現する脂質関連マクロファージは、線維化組織の分解を促進する保護機構の役割を果たします。TREM2+マクロファージが欠如すると、肝臓は線維化組織を除去できず、免疫反応や治癒過程にも悪影響が生じます」と述べています。
今後、TREM2の機能を模倣する薬剤(TREM2アゴニスト)は、生活習慣改善や減量手術と組み合わせることで、MASHおよび線維化の回帰を促す新たな治療法として期待されています。
研究に関与した追加の著者
研究には、サラ・ブリン・ローゼンタール、ケイ・イシズカ、テレーザ・V・ローム、ナセール・カーダー、セバスティアーノ・アルキレイ、ジェロルド・M・オレフスキー、アリエル・E・フェルドスタイン、タチアナ・キセレワ、ロヒト・ルンバ(カリフォルニア大学サンディエゴ校)、およびタイ・D・トラウトマン(カリフォルニア大学サンディエゴ校およびシンシナティ小児病院)、さらにジャスン・リサーチ・アンド・ディベロップメントのジャーマン・アレマン・ミュンチ、サノ・ヤスヨ、ペイマン・ソロシュらが参加しました。
画像:クッパー細胞をカラー化した走査型電子顕微鏡写真。この免疫系細胞は肝臓にのみ存在し、異物、死細胞、病原体を検出・除去することで他の細胞を守っている。また、脂質やタンパク質複合体など、さまざまな化合物の代謝にも関与している。(Credit:Thomas Deerinck、カリフォルニア大学サンディエゴ校、国立顕微鏡・イメージング研究センター)



