University of Pittsburgh Cancer Institute (UPCI, ピッツバーグ大学がん研究所) の研究チームはがん細胞の成長を止める方法を発見した。この発見が新しい抗がん治療法に結びつく可能性がある。ある種のがん細胞は重要なタンパクを奪われると正しく分裂できなくなるという研究報告であり、Journal of Cell Scienceの2013年2月号の巻頭記事を飾っている。この報告論文は2012年9月26日付同誌初出。

 


UPCIの分子薬理学Richard M. Cyert記念教授を務め、研究報告論文筆頭著者のBennett Van Houten博士は、「細胞再生という重要な段階でこのタンパクを変化させることで、がん細胞の成長を止めることができるのか、私たちがその機序を初めて説明できた。現在、私たちが望むのは、今回の発見で新しいタイプのがん治療薬の開発が促進され、既存の医薬と相乗効果をもたらすようになることだ」と語っている。

細胞はすべてミトコンドリアのネットワークを持っている。このミトコンドリアは細胞内にある微小な構造で細胞のエネルギー生産と新陳代謝に欠かすことができない。Dynamin-related protein 1 (Drp1) はミトコンドリアの分裂を助ける物質で、ミトコンドリアは分裂して2つの新しいミトコンドリアになる。ところが、乳がんや肺がんではDRP1の欠乏が頻繁に起こり、ひどく融け合ったミトコンドリアの巨大なネットワークが観察される。このようながん細胞は、G2/Mと呼ばれる細胞分裂の途中段階で分裂が停止したように思われる。新しく2つの細胞に分裂することができないためにがんの成長が止まったわけである。このような細胞は、分裂しようとして文字通り染色体を引き裂き、細胞のストレスをさらに高めることになる。


Journal of Cell Scienceの表紙には、DRP1欠乏の乳がん細胞が、その染色体をまったく同じ形の2つの新しい染色体に分裂させ、2つの新しい細胞に分裂する過程で停止している姿が色鮮やかな画像に収められている。Van Houten博士の研究室の博士研究員で、筆頭著者のWei Qian博士が、ピッツバーグ大学Biologic Imagingセンターを指揮する共著者であるSimon Watkins博士の共焦点顕微鏡技術を用いてその画像を捉えた。

Van Houten博士は、「DRP1を取り除いてがん細胞の成長を停止するプロセスが明らかになると、今度は同様の機序を示す既存の化学物質を探した。このような形でミトコンドリアに作用すると細胞の成長を阻止することが分かっているから、同じ生物学的プロセスを起こす医薬をがんの治療に適用することができるはずだと考えた」と語っている。研究チームは、Mdivi-1という化学物質が、がん細胞に対して、DRP1欠乏の時と同じような挙動を示すことを突き止めた。さらに、このMdivi-1を、すでに数多くの固形がんの治療に用いられているシスプラチンと合わせて用いると、様々のがん細胞で急速な細胞死を引き起こすことができた。つまり、Mdivi1はシスプラチンの効果を高めることを意味している。Mdivi-1は培養細胞を用いて実験中であり、その試験から、この化学物質はがん細胞からDRP1を取り除くかのように作用するが、実際には異なる機序を持っている」と語っている。

さらに、「これは科学上の幸運というもので、素晴らしい発見だった」と話し、今後、最終的にはMdivi1を実験室段階から臨床治験にまで進めたい。私たちは、がん細胞のDRP1欠乏症を引き起こすような化合物を探していたが、代わりに新しいがん治療法を見つけた。この治療法はかなり有効なようだ」と語っている。この研究報告論文の共著者として、ピッツバーグ大学のSerah Choi, Gregory A. Gibson、Christopher J. Bakkenist博士が加わっている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Researchers Reveal Mechanism to Halt Cancer Cell Growth, Discover Potential Therapy

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