欧州参照ゲノムアトラス(ERGA)のパイロットプロジェクトが、欧州全域の科学者らを結集し、98種の高品質な参照ゲノムを作成することに成功したと発表しました。この成果は、欧州の動物、植物、菌類すべての高品質な参照ゲノムデータベースを構築するという壮大な目標における重要な節目となります。本プロジェクトは、2021年にERGAの前会長カミラ・マッツォーニ博士(Camila Mazzoni, PhD)によって提唱され、ERGA全体の協力の下で開始されました。この大陸規模の取り組みは、包摂的かつ公平な生物多様性ゲノミクスの新しいモデルの基盤を築き上げたとされています。この成果は、2024年9月17日付で学術誌npj Biodiversityに公開された「The European Reference Genome Atlas: Piloting a Decentralised Approach to Equitable Biodiversity Genomics(欧州参照ゲノムアトラス:公平な生物多様性ゲノミクスへの分散型アプローチの試験)」という論文で報告されています。

プロジェクトの成功と意義

ERGAは、欧州33か国からなる大規模な協力ネットワークを構築し、これまでに98種の欧州生物の高品質参照ゲノムを作成するという画期的な成果を上げました。このプロジェクトにより、多くの教訓が得られ、課題が明らかとなり、ERGAは世界中の分散型で包摂的かつ公平な生物多様性ゲノミクスの模範としての地位を確立しました。

特筆すべき成果の一つとして、欧州で最も生物多様性の高い地域の一つであるギリシャにおいて、初めて染色体レベルのゲノムアセンブリが行われた点が挙げられます。例えば、ギリシャの科学者によって採取されたクレタトカゲやアリストテレスナマズのゲノムは、誰もがアクセスし研究可能な形で公開されています。

プロジェクトがもたらす影響

このような成果は、生物多様性科学の国際的な共同体を結集し、国境を越えた協力を促進する可能性を示しています。本プロジェクトは、地理的条件に関係なく、すべての人がゲノム研究とその資源を利用できるようにすることを目指しました。参加者や参加国の多くにとって、これは自国の生物多様性のために最先端の参照ゲノムリソースを生成する初めての機会でもありました。

さらに、本プロジェクトにより、絶滅危惧種の保全や人間の健康、バイオ経済、バイオセキュリティなど、多岐にわたる分野での新たな発見が可能になるゲノムデータの重要性が浮き彫りになりました。

研究成果の具体例

プロジェクトの成果として、北大西洋の商業的に重要な魚種であるアルゼンチナシラスの参照ゲノムが初めて作成されました。このゲノムデータにより、種の遺伝的状態を正確に評価し、持続可能な漁業管理の意思決定を支援することが期待されています。また、オジロワシの高品質参照ゲノムも初めて公開されました。このゲノムを用いれば、現在は症状だけが知られている「羽根の萎縮症候群」などの遺伝的疾患の解明が進むと考えられています。

結論

ERGAの成功は、国際協力を通じて生物多様性ゲノミクスの未来を切り拓く可能性を示しています。この取り組みが示した教訓や解決した課題は、今後の取り組みを指針とし、欧州および世界中の種の包括的なゲノムデータベースの構築を促進するでしょう。

[News release] [npj Biodiversity article]

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