UCLAの研究チームは、KRASバリアントと呼ばれる比較的ありふれた遺伝性の遺伝子突然変異を持つ女性が、エストロゲン量の急激な低下を経験した場合、乳がん発生のリスクが高まるだけでなく、発生した乳がんの生体的な変化にも影響することを発見、さらには、KRASバリアントを持つ女性は、最初の乳がんとは別に新しく二つ目の乳がんの発生するリスクが高いことも突き止めた。

 

UCLA Jonsson Comprehensive Cancer CenterのProfessor of Radiation OncologyとDavid Geffen School of MedicineのDirector of Translational Researchを兼任するDr. Joanne Weidhaas (写真) の指導する研究チームが2年かけた研究で、1,700人を超える乳がん患者から提供されたDNAサンプルの遺伝性KRASバリアント検査データを分析した。この研究では、KRASバリアントを持っているが、がんにかかっていない女性の集団と臨床結果を科学的に確認するための生体モデルも対象に加えている。


その結果、Dr. Weidhaasの研究チームは、卵巣摘出後やホルモン補充療法中止時に起きる急激なエストロゲン離脱や低エストロゲン状態が、KRASバリアントの女性の乳がんと関連していることを突き止めた。また、この研究で対象としたKRASバリアント生体モデルでも急激なエストロゲン離脱が乳がん発生を引き起こすことも明らかになった。また、KRASバリアントを持つ乳がん患者の45%で最初の乳がんとは別に新たな乳がんが発生した。この数字はKRASバリアントを持たない乳がん患者と比べると12倍の高リスクである。

Dr. Weidhaasは、「これまでもKRASバリアントが、男性と比べて女性の場合にはかなり正確な予測因子になるという証拠はあったが、その事実の科学的説明はできていなかった。今回の研究で、エストロゲン離脱がKRASバリアントを持った女性のがんリスクに関わっている可能性が示されており、解明に一歩近づいた」と述べている。

過去の研究では、併用ホルモン補充療法を受けている女性は乳がん発生率が高いという結果が出ており、今回の研究結果と対立するが、過去の研究でもフォローアップ調査で、「エストロゲン単独ではむしろ乳がんを防いでいる可能性が高い」という結果が出ており、今回の研究結果と一致する。Dr. Weidhaasは、「KRASバリアントは、エストロゲン補充療法を続けるべきか、最小限量にとどめるべきか、あるいは適正な方法で徐々に減らしていくべきかを判断する手がかりとなる遺伝的な差異と考えられる。

この研究成果から、乳がんを最大限に予防できるエストロゲン管理の方法を突き止め、同時に初めて乳がんと診断された患者に対する他の治療法の効果も理解することで、KRASバリアントを持った女性の乳がんリスクを患者個々人の条件に合わせて引き下げる個別化治療の絶好の機会になればと期待している。

この研究論文は、2015年5月11日付Cell Cycle 誌オンライン版に、「Estrogen Withdrawal, Increased Breast Cancer Risk, and the KRAS-Variant」の表題で発表された。

原著へのリンクは英語版をご覧ください
Acute Estrogen Withdrawal Increases Breast Cancer Risk in Women with KRAS-Variant Mutation

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