クローン襲撃アリの驚異的な遺伝的多様性維持戦略とは?
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遺伝的多様性を維持する無性生殖アリの謎。 遺伝的多様性は、種の生存にとって欠かせない要素です。性別を持つ生物では、精子と卵が組み合わさることで、2つの異なる遺伝情報が次世代に引き継がれ、種の多様性が保たれます。しかし、無性生殖ではこの多様性が失われやすく、種の存続に支障をきたす可能性があります。その一例が「クローンレイダーアリ」と呼ばれるアリで、無性生殖によって母親の遺伝子情報をそのまま引き継ぐ娘を生み出し続けます。通常であれば、このような遺伝的多様性の欠如は種の絶滅に繋がるはずですが、このアリは存続し続けています。一体どうしてでしょうか? クローンレイダーアリの生存戦略 ロックフェラー大学の研究者らは、クローンレイダーアリが無作為に遺伝子を受け継ぐのではなく、古代のクローン系統の多様性を維持するように工夫していることを発見しました。研究の結果は、2024年7月16日にNature Ecology & Evolution誌に発表され、「Co-Inheritance of Recombined Chromatids Maintains Heterozygosity in a Parthenogenetic Ant(組み換え染色体の共継承が無性生殖アリにおける遺伝的多様性を維持する)」という論文にまとめられています。 無性生殖のジレンマ 無性生殖を行う種は、爬虫類、両生類、線虫、魚類、鳥類など少数ながら存在しますが、その多くは長期的に存続できません。第一著者のキップ・レイシー(Kip Lacy)は、「無性生殖は遺伝的な劣化を避けられない一方通行の道」と述べています。毎回の生殖で遺伝子が劣化していくため、種の絶滅は避けられないとされています。 無性生殖の生物は、2つの大きな課題に直面しています。1つは、2セットの染色体を持つ二倍体のゲノムをどのようにして次
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