microRNAの発現様式が、バレット食道が食道腺がんに移行する前がん症状の進行を検出する手がかりになるかも知れないという研究報告が、American Association for Cancer Research発行の学術誌「Cancer Prevention Research」の2013年3月号に掲載されている。テキサス州ヒューストンのUniversity of Texas MD Anderson Cancer Center、Division of Cancer Prevention and Population Sciences、Department of Epidemiologyの科長、Xifeng Wu, M.D.は、「アメリカでは、食道腺がんはかつては全食道がんの5%程度というまれながんだったが、過去30年で6倍と急激に増えており、現在では新しく食道がんと診断される症例の80%以上を占めるようになった。
食道腺がんによる死者を減らすためには、短期的には初期段階で発見するか、もっと良いのは、バレット食道と呼ばれる前がん病変から食道腺がんに進行するのを抑えることだ」と語っている。
Dr. Wuと同僚研究者は、microRNAに眼をつけた。microRNAは小型のリボ核酸で、多数の遺伝子を制御することができる。研究の結果、microRNAの異常発現が、がんの進行にかかわっている可能性が示された。研究チームは、正常な食道上皮、バレット食道の食道上皮、さらに様々なレベルの組織学的がん進行リスクを負った食道腺がんの組織のmicroRNAのサンプルを何百と集めて比較した。その結果、各組織学的段階で、いくつかの異なるmicroRNAの発現が認められた。
Dr. Wu は、「バレット食道と食道腺がんの組織のmicroRNA発現は非常によく似ており、バレット食道発症のかなり初期からmicroRNA異常が始まることを示している。microRNA発現のこのような異常がその後に様々な事象を引き起こし、最終的に悪性腫瘍の形成につながると考えられる」と述べている。ただし、研究チームは、バレット食道と食道腺がんでははっきりと異なる少数のmicroRNAも見つけた。特に、microRNAのmiR-375のダウンレギュレーションと、miR-17から92までの5種類のmicroRNAと同族体ファミリーのアップレギュレーションが、バレット食道と食道腺がんでは異なるようだった。
Dr. Wuは、「したがって、バレット食道患者で、miR-375のレベルの低い人または、食道腺がん患者でアップレギュレーションと同定された5種類のmicroRNAのレベルの高い人は、悪性腫瘍進行のリスクが高いため、バレット食道のintensive surveillance、スクリーニング、治療が必要だ。私たちが突き止めた、発現の異なるmicroRNAのターゲットとなるタンパク質コード遺伝子を明確にすれば、食道腺がんの発生の機序を生物学的に理解する大きな手がかりになるかも知れない。さらには、これらの遺伝子そのものが、予防・治療ターゲットとなるだけでなく、バレット食道の進行を予測するバイオマーカーとしても有望になるかも知れない」と述べている。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:MicroRNAs May Predict Cancer Progression of Barrett's Esophagus
