細胞内ガン抗原に届く抗体で、抗がん免疫強化

2012
3月 14
(水)
15:20
臨床医学のライフサイエンスニュース

細胞内ガン抗原に届く抗体で、抗がん免疫強化

癌治療において化学療法および免疫療法を併用することで、ガン細胞を探し、排除する免疫システムの機能を強化することが出来る。しかもこれは、ガン関連タンパク質がガン細胞膜の背後に隠れている場合でも有効である。と、日本およびスイス、そして米国の国際研究チームが発表した。2012年2月8日付けのCancer Research誌のオンライ版で発表された記事において研究チームは、特定の癌治療において有効である抗体が、化学療法と併用された場合、細胞内の捉えにくいターゲットまで的確に届き、結果腫瘍の進行を遅らせ、生存期間を延ばすことが出来ると発表した。「本研究は癌治療薬の開発における着目点を広げる新しい方策の原理証明を提供しており、それにより異なる種類の癌に幅広く適用可能になるかもしれません。」と、Cancer Research誌の責任著書であり、がん研究所(CRI)より資金提供を受けている大阪大学免疫学フロンティア研究センター実験免疫学、西川博嘉准教授は語る。ガンに対する抗体の導入は、過去20年間にわたるガン治療において最大の成功をおさめている。この治療法は、ガン細胞の表面上のマーカーをターゲットとし、乳がん細胞におけるHER2/neuマーカーをターゲットとする画期的新薬ハーセプチン、およびB細胞性リンパ腫}]におけるCD20マーカーをターゲットとするリツキサンを含む。しかし正常細胞からガン細胞を区別できるマーカーの大半は、抗体が一般的にはアクセス出来ないガン細胞}]の内部に存在するのである。

 

「ガン細胞内のガン抗原を治療することの出来る療法があれば、正常細胞に対する付帯的損害により起こる副作用無しで抗がん治療が可能になります。」と、ルードヴィヒ癌研究所(LICR)ニューヨーク支部の準ディレクターおよび本研究の共同責任著者、ゲルド・リッター博士は語る。リッター博士は、本研究をサポートしているCRI/LICR癌ワクチン共同研究所の主要メンバーでもある。細胞内抗原に対する抗体治療が有効であるかどうかを調べるため、研究チームはガン抗原のプロトタイプであるNY-ESO-1を使用し、NY-ESO-1をガン細胞内で発現するよう操作された大腸癌モデルで治験した。
結果、単体では、この抗体のガンに対する効果は皆無であった。しかし抗体投与の前に、ガン細胞からNY-ESO-1を放出させる化学療法を用いたところ、ガンの進行を大幅に遅らせ、生存期間を延ばすことが出来たのである。

研究チームがその後、同様の方略を異なるタイプの化学療法を用いて行ったところ、同様の結果が示されたため、このアプローチは様々な標準化学療法を用いて異なる種類の腫瘍に適用される可能性がある。この治療法に対する免疫反応をモニターした所、併用の抗腫瘍効果はCD8+またはキラーT細胞によるものであることが判明した。この抗体は、ガン細胞を死滅させるために直接働きかけるよりも、NY-ESO-1抗原に結合し、CD8+T細胞に対する提示を促進するように働きかけるため、抗腫瘍効果を発揮したのである。これらの知見は、科学者達がガンに対する現在の抗体治療メカニズムの理解を深める役に立ち、また、臨床ガン免疫学における根本的な問題に光をあてている。
それは、NY-ESO-1に対する自発抗体およびCD8+T細胞反応を、ヒトがどのようにして獲得したのか、という謎である。

「これらの研究はまた、化学療法および他の標準療法の併用で抗腫瘍免疫を増強する、免疫治療におけるトレンドの代表であります。」と、本研究主任、三重大学大学院医学部腫瘍内科・免疫学学科長および教授、珠玖洋博士は語る。これらの治療は、免疫システムの勢いを弱めることで、タンデムまたはシークエンスで使用される免疫療法の有効性を制限するのではないかと、ごく最近まで考えられてきた。しかし、最近の文献では、方略的に使用される化学療法および放射線治療のような細胞傷害性または“細胞殺傷性”療法は、免疫療法に相乗効果をもたらし、抗腫瘍免疫反応を強化・発展させることが出来ると示されている。

前臨床試験においての成果に基づき、研究チームは臨床試験に進むことを熱望している。そのような試験では、受動免疫療法および能動免疫療法のふたつを架橋することになる。「体外で製造された抗体を使用しているので“受動”なのです。我々の身体はこの抗体を作るために働かなくていいのです。しかし、これらの抗体はその後免疫システムを起動し、サイトカインのように強力な細胞や内因性分子など、腫瘍に働きかける補体を産生するため、“能動”でもあるのです。これは、腫瘍除去メディエーターとしての抗体の治療能力を利用する、初の強力な方略であります。」と、リッター博士は語る。

[BioQuick News: Antibodies to Intracellular Cancer Antigens Can Enhance Anti-Cancer Immunity]


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