マススペクトル解析に知っていると役立つマスディフェクト値について-1
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは。質量分析屋の髙橋です。お仕事で質量分析に携わっている皆さんは、マスディフェクト値と言う用語を知っていますか。マスディフェクト値とは、日本質量分析学会が発刊しているマススペクトロメトリー関係用語集では、“ノミナル質量からモノアイソトピック質量を差し引いた値”と定義されています1)。 例えばベンゼン(C6H6)では、ノミナル質量は78、モノアイソトピック質量は78.04695ですから、マスディフェクトは-0.04695となります。また、同じ芳香族化合物であるアントラセン(C10H14)の場合、ノミナル質量は178、モノアイソトピック質量は178.07825ですから、マスディフェクトは-0.07825となります。つまり、当然ですがモノアイソトピック質量の小数点以下の数値が大きいほど、マスディフェクト値は小さくなります。 通常の有機化合物の主な構成元素は、C, H, N, O, P, S, Clなどであり、CとHを中心としてそれ以外の元素が含まれる場合が多いと思います。それぞれの主同位体の精密質量は、12.000…, 1.007825, 14.003074, 15.994914, 30.973761, 31.972071, 34.968852であり、整数で近似した質量(質量数)より大きい原子はHとNのみです。有機化合物の構造を炭化水素を中心に考えると、分子が大きくなるほどマスディフェクト値は小さくなり、O, P, S, Clなどの元素が含まれてくるとマスディフェクト値は少し大きくなります。 図1は、縦軸に-マスディフェクト値、横軸に分子の質量をとったグラフです。マスディフェクト値に-を掛ける事で小数点以下の数値を表す事になります。分子量500程度の飽和炭化水素、リン脂質、ペプチドの例を●で示しましたが、同様な化合物の場合、分子量が小さくなると小数点以下の数値
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)