MSMS(タンデム質量分析)の動作や用語(3)
サイエンス出版部 発行書籍
質量分析屋の髙橋です。今回は、MS/MS(タンデム質量分析)の動作や用語その3、プリカーサーイオンスキャンについてです。プリカーサーイオンスキャンは、特定のプロダクトイオンを生成するプリカーサーイオンを検出するMS/MSの測定法です。 タンデム質量分析には、空間的タンデム質量分析と時間的タンデム質量分析があります。それぞれの方法に対応する装置として、前者はQqQ, QTOF, Q-Orbitrap、4セクターなど、後者はQITやFTICRなどがあります。今回のテーマであるプリカーサーイオンスキャンは、空間的タンデム質量分析で且つ、MS1, MS2共に電圧走査型の装置でのみ実施可能です。先に挙げた中では、QqQと4セクターが相当します。QqQを例に動作を説明します。 MS2は特定のm/zのイオンのみが通過できるように電圧を固定します。つまり、SIMの状態に設定します。そして、MS1はスキャンモードで動作させます。MS1は、設定したm/z範囲のイオンが小さい方から順番に全て通過し、qでCIDによって開裂してプロダクトイオンが生成します。その中にMS2を通過するイオンがあった場合、その時のMS1の電圧から通過していたプリカーサーイオンのm/z値が分かります。 Q-TOFやQ-Orbitrapでは何故プリカーサーイオンスキャンができないか? MS2が電圧走査(スキャン)型の質量分離部ではないからと言ってしまえばそれまでですが、MS/MSの動作を考えれば容易に理解できます。TOFとOrbitrapの共通点は、質量分離部に対して、イオンをパルスで打ち込む事です。Q-TOFやQ-OrbitrapのMS/MSで、プリカーサーイオンスキャンの動作が可能かどうか、ここで考えてみましょう。先ずQをスキャンしてイオンをm/zの小さい順に通過させ、q(コリジョンセル)でCIDによっ
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)