高分解能質量分析計を使えば必ず高い質量確度で精密質量測定ができる訳ではない!


サイエンス出版部 発行書籍

こんにちは! 質量分析屋の高橋です。前回、高分解能質量分析計で得られたマススペクトルにおいては、イオンのm/z値を小数点以下3桁ないし4桁のレベルで測定することができ、イオン種が分かれば元の分子の精密質量が得られるので、分子の元素組成を推測することができることを説明しました。   一般的に高分解能と呼べるのは、20,000 (FWHM) 以上であり、現在市販されている、LC-MSでは、幾つかのメーカーから販売されているQ-TOFと電場型および磁場型のFT-MSが該当します。そのような高分解能質量分析計を使えば、誰でもどんな状況でも、高い質量確度で精密質量測定ができるかというと、そんなことはありません。装置のことを良く知らない営業マンの方は、“この装置を使えば誰でも簡単に精密質量測定→組成推定ができますよ”と言ったりしますが、実際にはそんなに単純ではありません。幾つか注意点を紹介します。   1. 外部および内部の質量校正  質量校正の重要性については、最初の回で解説しました。この時は、外部質量校正を想定した解説でした。外部質量校正とは、システムが一つの条件に対して一つだけ(例えば正イオン検出モードと負イオン検出モードで各1つ)保有している質量校正情報(電圧や飛行時間 vs m/z値)を基に、測定されたマススペクトルの質量(m/z値)校正を行うものです。  一方、内部質量校正とは、目的の試料とできるだけ近い時間に測定された質量校正試料の m/z値情報を、測定データあるいは複数の測定データを取得するためのバッチファイルなどが保有し、それを基に分析種イオンのm/z値を正確に質量校正するものです。 ①分析種イオンと質量校正試料イオンを同一のマススペクトル上におく方法、 ②試料測定中に常に質量校正試料の測定を同時に行う方法、 ③試料の測定-測定間に質量校正試料の測定

著者: 髙橋 豊

髙橋 豊

このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。

バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長

【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)

【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞

【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段

【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)

【HP】
エムエス・ソリューションズのホームページ
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