高分解能質量分析計を用いたLC/MS(/MS) によるマススペクトル取得の注意点
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは! 質量分析屋の髙橋です。 前回までに、高分解能質量分析計を用いるメリットや、精密質量測定を行う際の質量校正等における注意点について少し解説しました。今回は、高分解能質量分析計を用いたLC/MSにより得られたデータ(マススペクトル)から目的イオンの正確なm/z値を取得し、組成推定を行うという過程における注意点やノウハウについて書いてみたいと思います。 ただし今回の内容は、装置が適切な環境に設置されていて且つ正しく質量校正が出来ている状況にあることを前提にしています。 1. イオン強度やピーク形状と質量確度の高さを確認する 図1に、ある分析種をLC/MS分析した際の抽出イオンクロマトグラム(extracted ion chromatogram, EIC)と3つの保持時間におけるマススペクトルイメージを示します。マススペクトルにおいて、黒線はバックグラウンドイオン、赤線は分析種イオンを示しています。時間軸に沿って分析種由来のイオン強度は変わります。マススペクトル①はEICピークの立ち上がりで観測されたものであり、分析種イオン強度は非常に低いことを意味しています。イオン強度が非常に低い場合、そのプロファイルはノイズがのったようになり、ソフトウエアがピークの位置を正しく判定できません。マススペクトル②のように適度なイオン強度の場合、そのプロファイルは正規分布に近い形状になり、高分解能マススペクトルではそのピーク幅も狭いので、ソフトウエアがピーク位置を正しく判定することができます。 また、マススペクトル③は分析種イオンの強度が大きすぎて、検出器のフルスケール(FS)を超えてしまっているイメージです。 最近はオートゲインコントロール機能のついたLC-MSが多いですが、それでもイオン強度が大きすぎてピーク位置を正し
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)