窒素ルールについて
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは! 質量分析屋の高橋です。 前回まで、マススペクトルから得られる質量情報について、いくつか解説してきました。今回は、その一環として“窒素ルール”について解説します。窒素ルールとは、C, H, N, O, P, S, ハロゲン元素などから成る一般的な有機化合物において、 ・窒素原子を0個または偶数個含むと、化合物のノミナル質量は偶数になる ・窒素原子を奇数個含むと、化合物のノミナル質量は奇数になるという規則のことです。 これは、質量分析のみならず、化学において化合物の分子量や分子質量を計算する時に役立つ規則です。質量分析においては、マススペクトル上に観測されているイオンのm/z値およびそのイオン種から、その分子に窒素原子が含まれているかを判断する際に役立ちます。EIで得られる奇数電子イオンとESIやAPCIで得られる偶数電子イオンでは、質量の扱い方が少し異なりますので、注意が必要です。 例えば下図(左)の例のように、電子イオン化(EI)で得られたマススペクトルの最も大きなm/z値で観測されている298がM+・である場合、元の分子のノミナル質量も298ですから、窒素原子を0個または偶数個含んでいることになります。 また、下図(右)の正のエレクトロスプレーイオン化(ESI(+))により得られたマススペクトルの例では、m/z 700に観測されているイオンが[M+H]+であることが分かりますので、元の分子のノミナル質量は699となり、窒素原子を奇数個含むことが分かります。 後に、高分解能質量分析計により得られた精密なm/z値からの組成推定について解説しますが、その際にも窒素ルールは役立ちます。
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)