肥満が心筋構造に及ぼす影響:HFpEF患者の新発見
サイエンス出版部 発行書籍
ジョンズ・ホプキンス医学研究所の研究者ら(Johns Hopkins Medicine)が主導した小規模な研究により、肥満が「射出分画保存型心不全(heart failure with a preserved ejection fraction, HFpEF)」を持つ患者の筋肉構造に及ぼす影響が明らかになりました。この研究成果は2024年7月25日にNature Cardiovascular Research誌に発表され、「Myocardial Ultrastructure of Human Heart Failure with Preserved Ejection Fraction(ヒト射出分画保存型心不全における心筋超微細構造)」と題されています。 HFpEFは全世界の心不全の半数以上を占めるとされ、米国では心不全患者約350万人がこのタイプに該当します。かつてHFpEFは高血圧に伴う筋肉の肥大(肥大症)と関連付けられていましたが、この20年間で重度の肥満や糖尿病を抱える患者に多く見られるようになりました。しかし、効果的な治療法が限られており、ヒトの心組織を用いた研究が少ないため異常の詳細な解明が難しい状況です。HFpEF患者の入院や死亡率が高い(5年間で30〜40%)ことを考えると、その根本原因の理解が急務とされています。 ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授で研究主任を務めるデビッド・カス博士(David Kass, MD)は次のように述べています。「HFpEFは様々な臓器に異常をきたす複雑な症候群です。心不全(HF)と呼ばれるのは、その症状が心筋が弱った患者と似ているからです。しかし、HFpEFでは心筋の収縮は正常であるにもかかわらず、心不全症状が現れます。従来の心不全治療薬では改善が難しい一方、糖尿病や肥満治療薬での成功例が見られます。」 特に、糖尿病治
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