白血病細胞が中枢神経系に広がるのを防ぐための強力な治療は、患者さん、特に子どもたちに重い副作用(神経毒性)をもたらすというジレンマがありました 。しかし、がん細胞の「食事」とも言える特定の栄養素を制限することで、この困難な戦いに打ち勝つ新たな道が開かれるかもしれません。

栄養分が乏しい脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)の環境は、転移しようとするがん細胞にとって本来大きな障壁となります 。それにもかかわらず、白血病細胞は中枢神経系(CNS: central nervous system)へと広がる能力を持っており、これを治療するためには神経毒性を引き起こすリスクのある強力なCNS向けの治療が必要不可欠となっています 。

この課題に挑むため、ナアマ・カナレク(Naama Kanarek)博士およびアラン・Y・L・ウォン(Alan Y. L. Wong)博士らの研究チームは、生体内(in vivo)での標的型CRISPRスクリーニングを活用し、全身性およびCNSの急性リンパ性白血病(ALL: acute lymphoblastic leukemia)がどのような栄養素に依存しているかを特定しました 。その画期的な成果をまとめた論文「「Copper depletion boosts CNS leukemia therapy by inhibiting nucleotide synthesis through impairment of mitochondrial complex IV activity(銅枯渇はミトコンドリア複合体IV活性の阻害を介してヌクレオチド合成を抑制することにより、中枢神経系白血病の治療効果を高める)」」が、Nature Cancer誌にて発表されました 。

カナレク博士らの研究チームは、異種移植(ゼノグラフト)モデルを用いた実験において、銅輸送体であるSLC31A1遺伝子の欠損、あるいは食事療法による介入のいずれかで「銅」を枯渇させることにより、全身性およびCNSの双方における白血病の進行を遅らせることができることを実証しました 。そのメカニズムとして、銅が枯渇することでミトコンドリアの複合体IV(complex IV)の働きが阻害され、がん細胞の増殖に必要なヌクレオチドの合成が抑えられることで、白血病細胞の成長が鈍化することが明らかになりました 。

さらに、食事からの銅の枯渇と、ALLの標準治療薬であるメトトレキサート(MTX: methotrexate)を組み合わせた治療法は、細胞株由来および患者由来の異種移植モデルの両方において、白血病の進行を強力に抑制しました 。

これらの発見は、ALLにおけるヌクレオチド合成を断ち切るための「介入可能な微量栄養素」として銅を特定するものです 。治療薬を届けることが難しいCNSにおいて、既存の白血病治療の効果を飛躍的に高める手段として、「銅の枯渇」が極めて有望な治療アプローチとなる可能性を提示しています 。

https://www.nature.com/articles/s43018-026-01177-4

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