アリジゴクの強力な毒の秘密を解明:256種の毒タンパク質を発見
サイエンス出版部 発行書籍
アリジゴクの幼虫が持つ強力な毒の仕組みを解明。 神経翅目(ネットウィング昆虫)の幼虫は、毒を用いて他の節足動物を捕食・消化します。中でもアリジゴクは砂地など乾燥した環境に生息し、砂の漏斗(funnel traps)を作って獲物を待ち伏せし、捕食することで知られています。こうした環境では食料となる昆虫の数が少ないため、アリジゴクは獲物を選ぶ余裕がありません。 そのため、獲物の大きさや防御力に関わらず、素早く麻痺させ、逃げられる前に殺すことが求められます。このような厳しい生存競争に適応するため、アリジゴクは非常に強力な毒を進化させてきました。 複雑な毒の生成メカニズムを持つアリジゴクの毒腺 マックスプランク化学生態学研究所(Max Planck Institute for Chemical Ecology、ドイツ)のハイコ・フォーゲル博士(Heiko Vogel, PhD)と、ギーセン大学(University of Giessen、ドイツ)のアンドレアス・ヴィルチンスカス博士(Andreas Vilcinskas, PhD)を中心とした研究チームは、アリジゴクの毒の発生源とその成分、さらには毒の生産におけるバクテリアの役割を解明することを目的に研究を行いました。彼らは、アリジゴクの毒がどの器官で生成されるのか、どのような成分で構成されているのか、そして同じ神経翅目に属するクサカゲロウ(Green Lacewing)幼虫の毒とどのように異なるのかを明らかにしました。 「アリジゴクでは合計256種類の毒タンパク質を特定しました。アリジゴクの毒腺全体は非常に複雑で、3つの異なる腺がそれぞれ異なる毒と消化酵素を、顎を介して獲物に注入しています。対照的に、クサカゲロウの毒腺からは137種類のタンパク質しか確認できませんでした。さらに、遺伝子解析を通じて、アリジ
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