質量分析計による測定の基本はイオン化にあり:ESI編その1、イオン源の変遷
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは。質量分析屋の髙橋です。これまで、“質量分析計による測定の基本はイオン化にある”というテーマで種々のイオン化について書いてきました。今回から複数回にわたって、現在LC/MSで汎用的に用いられているエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionizatio, ESI)について書いてみます。ESIの開発によって、LC-MSは実用的な装置になりましたが、エレクトロスプレー(ES)イオン源が最初からLC-MSに用いられていた訳ではありません。 今回は、私の知る限りという限定付きですが、ESイオン源に関する変遷について書いてみたいと思います。 市販のESイオン源を最初に開発したのは、Analytica of Branford(AB)という会社でした。1990年代の中頃のことだったと思います。当時、質量分析計の主なメーカーは、LC-MSのイオン源としてサーモスプレーをもっていました。 AB社は所謂サードパーティーで、各質量分析計メーカーにESイオン源を供給していました。初期のESイオン源の構造を図1に示します(詳細は正確ではないかも)。 図1 初期のESイオン源 ESは、高電界の作用で帯電液滴を生成させる技術ですが、液体の連続流から安定的に帯電液滴を生成させるには、液体の流量に制限があります。その流量は、概ね<5 µL/minです。1990年代中頃、LCで用いられていた移動相流量は1 mL/minが主であったため、LCをESI-MSに直結することは不可能でした。そもそも、当時のESイオン源で生成されるイオンは非常に不安定で、綺麗なマススペクトルを得るためには、最低1分間程度はシグナルを積算させる必要がありました。クロマトグラムのピーク幅を考えると、LCとの接続が不可能だったことが容易に分かると思います。 イオン生成が不安定だった主な
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)