質量分析計による測定の基本はイオン化にあり:EI編
サイエンス出版部 発行書籍
こんにちは! 質量分析屋の髙橋です。 “質量分析”は、日本質量分析学会のマススペクトロメトリー関係用語集によると以下のように定義されています1)。 「質量分析計(mass spectrometer)と質量分析器(mass spectrograph)、およびそれらの装置を用いて得られる結果に関するすべてを扱う科学の一分野。」 ピンと来ない部分もある定義ですが、要は“データの解釈”という部分にフォーカスされていて、“データを得る”という部分すなわち“測定”は含まれていないような印象を受けます。しかし、私は、“測定”の部分も当然“質量分析”に含まれて然るべきだと考えます。 “質量分析”の基礎・基本で重要なのは、何といってもマススペクトルの解釈であり、特に高分解能マススペクトルの解釈について今まで何度かにわたって書いてきました。今回から数回は、“測定”にフォーカスしてネタを書いてみます。 質量分析計による測定の基本はイオン化にあります。 質量分析は、気相イオンを分析(測定&データ解析)する科学です。今ここに、質量分析したい試料(含有成分)がある時、先ず考えなければならないことは、その試料(含有成分)がイオン化するか否か、複数のイオン化法の中からどのイオン化法を選択すべきか、ということです。ここで、この話を進める前に、イオン化の定義を明確にしておく必要があります。 イオン化とは... Wikipediaでは「電荷的に中性な分子を正または負の電荷をもったイオンとする操作または現象」、またコトバンクでは「電気的に中性の分子や原子が、電子を失うか得るかしてイオンになること」とあります。ここで、イオンになるときに分子内結合の開裂・断片化を伴う場合をイオン化に含めるか否かが問題で、その解釈次第でここでの話は意味が変わってきてしまいます。従ってここでは、分子内結合
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)