亜鉛サプリが抗菌薬耐性遺伝子(AMR)の拡散を抑制する可能性を発見

2024年10月3日、アイオワ州立大学の研究チームが学術誌「Applied and Environmental Microbiology」に掲載した論文で、亜鉛サプリが抗菌薬耐性遺伝子(AMR)の拡散を抑制する可能性を初めて示しました。論文のタイトルは「Dietary Zinc Supplementation Inhibits Bacterial Plasmid Conjugation in Vitro By Regulating Plasmid Replication (rep) and Transfer (tra) genes(亜鉛の食事補充がプラスミド複製遺伝子(rep)と伝達遺伝子(tra)を制御することでプラスミド接合を抑制)」です。

腸内で起こる抗菌薬耐性遺伝子(AMR)の拡散

AMR遺伝子は、プラスミドと呼ばれる環状の遺伝物質を介して細菌間で水平伝播します。この伝播は腸内で起こり、人々の健康に重大な脅威をもたらしています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、毎年数百万人がAMR感染症と診断され、そのうち35,000人が命を落としています。これらの遺伝子は複数の薬剤耐性を一度に拡散させる可能性があり、患者は抗生物質治療を始める前から耐性菌感染に苦しむことがあります。

亜鉛がプラスミド伝播を阻止するメカニズム

研究チームは亜鉛サプリの効果を実験室でテストし、耐性プラスミドを保有する鳥病原性大腸菌がプラスミドを持たない人間由来の大腸菌に接合する際の伝播率を調査しました。その結果、亜鉛を加えた細菌では伝播率が大幅に低下しました。特に、亜鉛濃度が高いほど伝播が抑制される傾向が確認されました。

さらに、亜鉛が伝播を抑制する遺伝子的メカニズムを調べたところ、以下のことが分かりました:

複製遺伝子(rep)の過剰発現: 亜鉛はプラスミド複製遺伝子を過剰に発現させ、その結果、複製プロセスを過負荷で阻害。
接合構造形成の抑制: 伝播に必要な細菌構造を形成する特定のタンパク質が亜鉛により阻害される。

腸内細菌叢に配慮した新しいアプローチ

今回の発見が注目される理由は、亜鉛が細菌自体を殺さずに伝播を抑制する点です。研究の主著者メルハ・メラータ博士(Melha Mellata, PhD)は、「腸内細菌を殺すと腸内フローラが乱れ、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、プラスミド伝播だけを防げばAMRの拡散を抑えることができます」と語っています。

今後の研究と応用の可能性

研究チームは次のステップとして、他のAMR遺伝子を持つプラスミドへの亜鉛の効果や、動物モデルを使った実験での検証を計画しています。メラータ博士は、「時には、既存のシンプルなソリューションが役立つことがあります。身近な亜鉛がこのような脅威に対処する鍵となるかもしれません」と期待を込めました。

[News release] [Applied and Environmental Microbiology article ]

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