タンパク質同定法(1)
サイエンス出版部 発行書籍
最初にエドマン分解を利用したプロテインシークエンサーによるタンパク質同定法について述べたい。プロテインシークエンサーではN末端のαアミノ基をPITCで修飾することからエドマン分解が始まるので、N末端αアミノ基がフリーでなければならない。プロテインシークエンサーではタンパク質を電気泳動後にPVDF膜に転写できれば、10ピコモル程度でN末端から10残基程度のアミノ酸配列を決定することは比較的容易である。 しかしながら、自然界の多くのタンパク質はN末端が修飾されているので、プロテインシークエンサーで配列を決定するためにはプロテアーゼでペプチド断片を調製する必要がある。 エドマン分解で得られるアミノ酸配列は結論的な結果であるので、質量分析全盛の今でも用途を選ぶことで非常に有用な解析手法である。タンパク質の正確な配列決定に加えて、限定分解部位の決定や糖鎖などの修飾部位の特定に有用である。さらにアミノ酸配列のβ転移有無の確認やタンパク質の純度検定にも利用できる。さて、プロテインシークエンサーでうまく配列決定するためのポイントは、サンプルの純度である。ひとことで純度といっても、多くの要素が含まれる。例えば、目的タンパク質の純度、電気泳動で単一にみえるバンドであっても別のタンパク質が含まれていれば複数のアミノ酸が検出されて配列決定が困難となる。 さらに、N末端アミノ酸が均一であること。目的タンパク質が高純度であっても、プロセッシング等によりタンパク質のN末端が不均一になっていることはよくある。この場合も複数のアミノ酸が検出されて配列の決定が困難になる。次に人為的なコンタミネーションの例を挙げる。電気泳動で単一のバンドをPVDF膜へ転写、染色・脱色、切り出しの操作中にケラチンが汚染することがある。 また、電気泳動後の操作に使用する容器をウエスタンブロッティングと併用していたため