胆管がん治療に一石を投じる、新たなブレイクスルーが誕生しました!治療の選択肢が限られ、世界中で罹患率と死亡率が上昇している難治性のがんに対し、これまでにない標的を狙い撃ちする革新的な抗体療法の可能性が示されたのです。

難治性がん「胆管がん」に潜む、新たながん遺伝子の発見

「胆管がん(CCA: cholangiocarcinoma)」は、肝胆道系に発生する腺がんであり、近年その罹患率および死亡率が上昇傾向にあります 。しかし、いまだ満足のいく治療法が少なく、予後が極めて悪いことで知られています 。

この難敵に立ち向かうため、ゼイン・ネーメ(Zeina Nehme)博士らの国際研究チームは、患者から採取した胆管がん組織を対象に、「シングルセルRNA解析(scRNA-seq: single-cell RNA sequencing)」および「空間トランスクリプトーム解析」という最先端の手法を用いて調査を行いました 。その結果、細胞と細胞を密着させる密着結合(タイトジャンクション)を構成する膜タンパク質の一種である「クローディン-1(CLDN1: claudin-1)」が、がん細胞の表面で過剰に発現していることを突き止めました 。さらに、このCLDN1の発現は、がん細胞の「幹細胞性(がん幹細胞としての性質)」や細胞の生存・分化の運命に深く関わっていることが判明したのです 。

この研究成果は、高名な学術誌『Science Translational Medicine』に「「Claudin-1 targeting suppresses tumor growth, invasion, and metastasis in patient-derived cholangiocarcinoma models(クローディン-1の標的化は患者由来の胆管がんモデルにおいて腫瘍の増殖、浸潤、および転移を抑制する)」」というタイトルで発表されました 。

 

クローディン-1ががんの増殖を加速させる

研究チームは、CLDN1が胆管がんにどのような影響を与えているかを検証するため、マウスの肝臓に直接がん細胞を移植する「同軸体内(orthotopic in vivo)マウスモデル」を用いた遺伝子機能獲得実験(遺伝子を過剰に働かせる実験)を行いました 。

その結果、CLDN1が過剰に働くと、腫瘍の増殖が著しく促進され、マウスの生存率が大幅に低下することが確認されました 。これにより、CLDN1が単なる病気の目印(マーカー)ではなく、がんの悪性化を直接引き起こす「がん遺伝子(オンコジェニック・ドライバー)」としての機能を持っていることが初めて明らかになったのです 。

 

狙い澄ました「抗体」が、がんの増殖と転移をシャットアウトする

CLDN1は本来、肝線維化やがん化に伴って細胞の表面に露出する性質を持っています 。研究チームは、この細胞表面に露出した非結合型のCLDN1を標的とする極めて特異性の高い「CLDN1モノクローナル抗体(mAbs: monoclonal antibodies)」を開発し、治療実験を行いました 。

実験では、患者由来のがん組織をマウスに移植したモデル(CDXおよびPDXモデル)や、患者の組織から作製したミニ臓器「患者由来胆管がんオルガノイド」が用いられました 。その結果、この抗体治療はCLDN1の発現量が中程度あるいは低い腫瘍に対しても、その増殖を効果的に抑制することに成功しました 。

さらに驚くべきことに、抗体治療は腫瘍の増殖を抑えるだけでなく、がん細胞が周囲に広がる「遊走・浸潤」、そして他の臓器へと広がる「肝外転移」をも強力にブロックすることが実証されたのです 。

 

分子レベルで解き明かされた「がんを抑え込む仕組み」

抗体がなぜこれほど劇的な効果をもたらすのか、その詳細なメカニズムも分子レベルで解明されました 。 細胞表面のCLDN1にモノクローナル抗体が結合すると、がんの悪性化に深く関与している「Notch1」および「TROP2/STAT3」と呼ばれるシグナル伝達経路の働きが阻害されます 。これにより、がん細胞が強力な増殖・生存能力を持つ「がん幹細胞」へと変化するのを防ぎ、同時に、がん細胞が移動能力を獲得して転移しやすくなる現象である「上皮間葉転換(EMT: epithelial-to-mesenchymal transition)」を抑制することが分かりました 。

この一連のメカニズムは、遺伝子をノックアウトするゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」や「RNA干渉(RNAi)」を用いた機能喪失実験、さらには「共焦点レーザー顕微鏡(confocal imaging)」による画像解析を組み合わせることで、確固たる事実として証明されています 。

 

進行胆管がんの患者さんに、新たな希望の光を

今回の研究によって、これまで見過ごされていたクローディン-1(CLDN1)というタンパク質が、胆管がんを進行させる極めて重要な治療標的であることが世界で初めて示されました 。

この画期的な成果は、CLDN1を標的とした抗体医薬品の臨床開発に向けた大きな一歩となります 。現在、有効な治療選択肢が少なく苦しんでいるアドバンスド(進行期)の胆管がん患者さんにとって、治療成績を劇的に向上させる革新的な新薬となることが強く期待されています 。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42234772/

 

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