一本鎖抗体は是か非か
サイエンス出版部 発行書籍
分子生物学的技法をもっていて様々な抗体をつくりたいと思うとどうしてもここへ行き着くようです。一本鎖抗体(scFv, single chain Fv)は、抗原との結合に必要な抗体遺伝子の部分(重鎖と軽鎖の可変領域、それぞれ VH と VL)をリンカーを介して繋げた断片としファージに組み込んだものです。 通常は、抗体産生細胞である B リンパ球の集団から調製しますが、ここから様々な抗体を単離したいので、正常な(無感作の)動物由来の B 細胞を用います。 スクリーニングを繰り返して抗原に結合するファージをとってくると、確かに特異性のあるものがとれてきます。結合実験をすると、ほどほどの強さのデータもとれます。世に出ている一本鎖抗体の論文は大部分がこのようにして生まれています。 そんな良い方法があるならばこれまでの抗体はすべて scFv に取って代わられるかといえば、そうではなく、動物を免疫して通常の方法で作った抗体の方がずっと使い勝手が良いのです。 この理由、考えてみませんか。
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著者: 大海 忍
このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。
抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任
【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)