パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の治療法開発において、脳内の複雑な免疫応答や神経ネットワークの再現は長年の大きな課題でした。この度、ヒトiPSC(人工多能性幹細胞)由来の細胞を用いて、脳の免疫細胞であるミクログリアを組み込んだ革新的な3D神経モデルが開発され、疾患メカニズムの解明と創薬スクリーニングに新たな光を当てています!
ミクログリアを組み込んだ神経スフェロイドが神経炎症応答を可能にし、αシヌクレイン変異によって引き起こされるネットワーク機能障害を改善
脳の主要な常在性免疫細胞であるミクログリア(microglia)は、神経疾患において保護的な役割と有害な役割の両方を担っており、魅力的な治療ターゲットとなっています。
今回、米国国立衛生研究所(NIH)のジアジン・ジャン(Jiajing Zhang)氏、マーク・フェラー(Marc Ferrer)博士、エミリー・M・リー(Emily M. Lee)博士 らの研究チームは、ヒトiPSC由来のミクログリア、アストロサイト(astrocyte)、および神経細胞(neuron)を用いて、神経ネットワーク活動と免疫応答の両方を測定できる「NeuroMIMICS(Neural Microglia Integrated Multicellular iPSC-derived Cultured Spheroids:ミクログリア統合型3D神経スフェロイド)」システムを開発しました。
研究グループは、この3種細胞共培養モデルにおいて、貪食能(phagocytic activity)、指向性運動能(directed motility)、そして炎症応答(inflammatory response)といったミクログリアの機能を検証・確認しました。RNA-seq(RNA-sequencing: RNAシークエンシング)解析により、ミクログリアの組み込みによって免疫機能に関わる表象型(フェノタイプ)が獲得されていることが示され、病原体様刺激を与えたスフェロイドにおけるサイトカイン(cytokine)産生の増加によっても裏付けられました。
さらに、健常なミクログリアを組み込むことで、αシヌクレイン(alpha-synuclein)A53T変異によって誘発された神経スフェロイドの機能障害フェノタイプが改善されることが実証されました。
本研究は、堅牢かつHTS(high-throughput screening: ハイスループットスクリーニング)に適した、免疫応答能を持つユニークな機能的神経モデルを示しており、神経疾患に対する新規治療薬の発見を加速させる基盤を築くものです。
