がん病理画像解析の現場に、人工知能(AI)による画期的な革新が訪れました!従来、がん組織の網羅的な遺伝子解析を行う「空間トランスクリプトミクス(spatial transcriptomics)」は、非常に高価で非常に時間と労力がかかる専門的な検査でした。しかし今回、一般的な病理組織標本(H&E染色スライド)から画像解析のみで数千もの遺伝子発現パターンを高精度に予測する新たな技術が登場し、がん治療の精密化に向けた大きな一歩を踏み出しました!

AIが病理画像から乳がんの空間トランスクリプトミクスを予測:病理標本から新たなバイオマーカーを発見

がん組織内の不均一性を理解するために、遺伝子発現の空間的配置を解析する「空間トランスクリプトミクス(ST: spatial transcriptomics)」は非常に重要な技術です。しかし、実際に分子測定を行う従来のST技術は費用が高く、スループット(処理能力)が低いという課題を抱えていました。

今回、米国国立がん研究所(NCI/NIH)のエレダッド・D・シュルマン(Eldad D. Shulman)博士、エマ・M・カンパニョーロ(Emma M. Campagnolo)氏、エイタン・ラピン(Eytan Ruppin)博士らの研究チームは、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色された病理組織スライド画像から数千もの遺伝子の空間的発現を予測するディープラーニング(Deep Learning:深層学習)フレームワーク「Path2Space(パス・ツー・スペース)」を開発し、論文「Path2Space predicts spatial transcriptomics to unlock breast cancer biomarkers from pathology(Path2Space:AI予測による空間トランスクリプトミクスが病理標本から乳がんバイオマーカーを解き明かす)」を専門誌 Cell に発表しました。

大規模な乳がんSTデータを用いて学習されたPath2Spaceは、従来の21の既存手法を凌駕する精度で数千の遺伝子発現パターンをきわめて頑健に予測します。TCGA(The Cancer Genome Atlas)データベースに登録された976例の乳がん腫瘍微小環境(TME: tumor microenvironment)を描出することで、細胞型の存在量を正確に推測し、生存期間(予後)が異なる3つの生物学的に定義された乳がんサブグループを特定することに成功しました。

特に注目すべき点として、この手法により得られた低コストな空間TME景観は、高価な従来のバルクRNAシークエンシング(bulk sequencing)に基づくバイオマーカーと比較して、化学療法やトラスツズマブ(trastuzumab)に対する患者の治療反応性をより正確に予測できることが示されました。

Path2Spaceは、従来の分子アッセイに代わるスケーラブル(拡張可能)で迅速かつ費用対効果の高いアプローチを提供します。これにより、大規模コホートでの治療バイオマーカー発見や腫瘍生物学の理解が加速し、乳がんだけでなく多様な領域のがん医療に応用されることが期待されます。

https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674%2826%2900458-7

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