犬と人間の口唇裂と口蓋破裂に関係する変異が突き止められる

2014.12.03
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人間と純血種の犬の奇形を研究している研究グループが、妊娠中に口唇と口蓋が正しく形成されないために起きる口唇裂や口蓋破裂とADAMTS20遺伝子の突然変異との関係を突き止めた。その研究報告がASHG2014年年次会議でプレゼンテーションされた。ADAMTSは、「A Disintegrin and Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs」の頭字語で、ペプチダーゼ・ファミリーの名称である。

 

人間の体内ではADAMTS20などこのファミリーの19種のペプチダーゼが発見されている。ADAMTSタンパク分解酵素の機能として知られているものには、プロコラーゲンやフォン・ビレブランド因子の処理、アグレカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンの開裂がある。これらのタンパク質は、結合組織の構成、凝固、炎症、関節炎、血管新生、細胞移動などに重要な役割を果たしていることが突き止められている。

また酵素活性のないADAMTSL (ADAMTS様) タンパク質の同族サブファミリーについても説明があった。University of California, Davis, School of Veterinary Medicineの大学院生、Zena Wolf, B.S.は、「この研究成果から、人間と犬双方の奇形の原因についてより理解が深まれば、人間、動物双方の医療に大きな変化をもたらす可能性がある」と述べている。人間でも犬でも口唇裂や口蓋破裂は程度の違いこそあれ自然に起きており、遺伝要因や環境要因が原因として考えられる。

Ms. Wolfは、「純血種の犬はごく少数の個体の間で交配が行われており、遺伝子の違いが少ないため、そのグループの中での口唇裂や口蓋破裂発生は研究しやすい」と述べている。これまでの研究では、犬の口唇裂22症例のうち12症例で顔と頭蓋骨の発達に関わるDLX5とDLX6という2種の遺伝子の突然変異が関わっていることが突き止められている。ところが、この2種に相当する人間の遺伝子の突然変異は研究サンプル30症例のうちわずか1症例でしか関係が見られなかった。Ms. Wolfと同僚研究者は、他にも関わっている可能性のある遺伝子を探し、口唇裂、口蓋破裂の犬のゲノムとこの種の奇形のない犬のゲノムとを全体にわたって比較するゲノムワイド関連分析 (GWAS) を行った。その結果、ADAMTS20遺伝子のエンコードするタンパク質がこの遺伝子の突然変異で75%も短くなり、奇形もこれに関連していることが判明した。過去の研究ではADAMTS20は口蓋の発達と形成に関与していることが裏付けられているが、自然に起きる突然変異は特に明らかになっていなかった。口唇裂や口蓋破裂のある人間についても同様なゲノムワイド関連分析が行われ、人間のADAMTS20遺伝子の突然変異でも同じ症状が起きるリスクが高くなる可能性があるという結果が出た。

Mr. Wolfは、「人間の口唇裂や口蓋破裂は複雑な条件があるため、犬をモデル化するというのはこのような奇形の研究をかなり単純化できる」と述べ、「研究が人間に役立つだけでなく、犬にも役立つようになる」と付け加えている。この研究には、University of California, Davis の研究チームの他、University of Pittsburgh、University of Iowa、オーストラリアのUniversity of Sydneyの共同研究者が参加した。研究者は特にNova Scotia Duck Tolling Retriever種を対象に選んだ。この種は純血種の中でも 特に口唇裂や口蓋破裂の症状が多いことで知られている。「Toller(おびき寄せる者)」と名前は岸で踊り回るなど奇妙な動作をしてカモをおびき寄せ、それを隠れているハンターが仕留め、それをこの犬が水に入って回収するというところから来ている。研究者の将来的な方向として、口唇裂や口蓋破裂に関わっている遺伝子が他にもないか探ることと研究対象をLabrador RetrieverやWhippetなど他の犬種にも拡げることが挙げられる。

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Michael D. O'Neill
APEX Award Winner
Edited by

Michael D. O'Neill

サイエンスライターとして30年以上の経験を持つ独立系科学ニュース編集者。世界160カ国以上に読者を持つ「バイオクイックニュース」を通じ、生命科学・医学研究の最前線をタイムリーに発信しています。