もっとも短期間で近固定に進んだ人間の遺伝子重複が自閉症遺伝子領域付近で見つかる

2014.11.26
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Dr. Mortonの暖かい歓迎の挨拶に続いて、もっとも優れたアブストラクトから4件を選んで総会でのプレゼンテーションがあった。その一つは、University of Washington, Dr. Evan Eichler研究室の学院生、Xander Nuttle, B.S., B.S.E.が自ら第一著者を務めた「Human-Specific Gene Evolution and Structural Diversity of the Chromosome 16p11.2 Autism CNV」と題されたアブストラクトの発表だった。University of Washington の研究チームは、現代人2,551人、大型類人猿86頭、ネアンデルタール人1体、デニソワ人1体のゲノムを解析した。

 

特にチームは16p11.2と呼ばれるヒト染色体16の領域を詳しく調べた。この領域は、自閉症の主要因となる欠失や重複が繰り返し起きるところで、統合失調症や極端な体重や頭囲にも関連している。simplex autism 患者の約1%でこの16p11.2の欠失または重複がみられる。研究チームは、DNAのこの領域の特定部分に反復があり、人によってその反復回数が異なることを突き止めており、その反復回数の違いが疾患と関連している可能性がある。

このような違いの起源をたどるため、研究チームはスイスのUniversity of Lausanne やイタリアのUniversity of Bariの研究者と共同研究を進め、大型類人猿ゲノムの対応する領域のシーケンシングと解析を行った。Mr. Nuttleは、「類人猿とヒトのゲノムを比較した結果、ヒトのゲノムは16p11.2に複雑な構造的進化があったことを突き止めた。この部分はしばしば自閉症の原因となる失欠や重複が知られている。このことから、この部分の変化が起きたのは比較的新しく、また人類独特だと考えられる」と語っている。科学者は、この遺伝子変異のために人類が疾患にかかりやすくなったが同時に新しい遺伝子の形成に役立っているのではないかと考えている。

そのような遺伝子の一つがBOLA2と呼ばれる遺伝子で、その役割はまだ分かっていないが、おそらく細胞増殖や細胞周期調節に重要な役割を果たしているのではないかと推定されている。研究チームは類人猿、ネアンデルタール人、デニソワ人では遺伝子BOLA2のコピーを2個しか持っていないが、現代人類はすべてこの遺伝子のコピーを3個ないし14個持っており、平均6個、また人類の98%は4個以上持っていた。

このような現代人類のBOLA2コピーの数の増加は、現代人類が70万年前に古代ヒト族 (ネアンデルタール、デニソワ) と分岐した後に起きており、わずか10万年という比較的短い期間にこの遺伝子の重複が現代人類の間で近固定した。このことから、BOLA2は人類進化の過程でもっとも短期間に重複が近固定した遺伝子といえる。これまでは、約240万年前に起源を持つSRGAP2Cという人類固有の遺伝子がもっとも短期間に重複が近固定した遺伝子の例と考えられていた。現在、研究チームは、遺伝子のコピーの増加が人類の進化に何か重要な役割を果たしているのではないかと考えて研究を続けている。

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Michael D. O'Neill
APEX Award Winner
Edited by

Michael D. O'Neill

サイエンスライターとして30年以上の経験を持つ独立系科学ニュース編集者。世界160カ国以上に読者を持つ「バイオクイックニュース」を通じ、生命科学・医学研究の最前線をタイムリーに発信しています。