DNAを利用して膨大なデータを保存する未来が、すぐそこまで来ているかもしれません! これまで特殊な施設や有害な薬品が必要だったDNA合成ですが、より身近な半導体チップを使って、環境に優しい水溶液中で複雑なDNAを同時に合成できる画期的な技術が発表されました。

今回発表された研究論文「半導体チップを用いた並列酵素的DNA合成 (Parallel enzymatic DNA synthesis using a semiconductor chip)」では、ウービン・ジョン博士 (Woo-Bin Jung)、ハン・セ・ジョン博士 (Han Sae Jung)、ドンヒ・ハム博士 (Donhee Ham) らの研究チームが画期的な手法を報告しています。

高密度なアレイ上で並列してDNAを合成する技術は、ハイスループットな合成生物学や診断において非常に重要であり、DNAをベースとしたデータストレージとしての活用も期待されています。これまでのホスホロアミダイト法による合成は大幅な並列化が可能であるものの、有害な溶媒や集中管理された施設に依存しているという課題がありました。一方で、穏やかな水溶液中で行う酵素的DNA合成は安全でアクセスしやすいものの、並列化の実証は初期段階にとどまっていました。

本研究においてジョン博士とハム博士らのチームは、相補型金属酸化膜半導体 (CMOS: complementary metal-oxide-semiconductor) チップを用いることで、最大64種類の異なる38〜39塩基 (nt: nucleotide) の配列(10〜11塩基の特徴配列を含む)の並列的な酵素的DNA合成に成功しました。このチップは256個のリング電極ペアのアレイ(それぞれがプログラム可能な合成サイト)を制御し、任意のパターンで局所的な酸性度を作り出すことで、DNAの脱保護とそれに続く酵素的なヌクレオチドの取り込みを可能にします。

さらに研究チームは、169バイトのテキストデータをエンコードすることで、この並列合成技術がデータストレージとして活用できる可能性も実証しました。またメカニズム解析の結果、間接的な局所酸化学ルートから直接的なルートへ移行することで、相補型金属酸化膜半導体のスケールアップに合わせた、よりハイスループットな酵素的合成が実現できる可能性が示されています。

https://www.nature.com/articles/s41467-026-75141-2

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