遺伝子組み換え幹細胞で増殖した皮膚を移植し、致死性の遺伝性皮膚疾患の児童を救うことに成功

2017
12月 7
(木)
14:00
遺伝子研究のライフサイエンスニュース

遺伝子組み換え幹細胞で増殖した皮膚を移植し、致死性の遺伝性皮膚疾患の児童を救うことに成功

ドイツのRuhr-Universität Bochum, burn unitとイタリアのUniversity of Modena, Center for Regenerative Medicineの医療チームは、遺伝疾患で広範な皮膚の損傷を受けている児童に遺伝子組み換え幹細胞から増殖した皮膚を移植し、治療に初めて成功した。少年の症状はいわゆる” butterfly child”と呼ばれる遺伝性の表皮水疱症に苦しんでおり、表皮の約80%が損傷を受けるひどい状態だった。既存の治療法がすべて失敗したことから、Bochumの医療チームは実験的な治療を施してみることにした。その治療が成功し、治療開始から2年経った今、少年は家族との生活や社会生活にも参加できるようになった。

研究論文は2017年11月8日付Nature誌オンライン版に掲載されており、「Regeneration of the Entire Human Epidermis by Transgenic Stem Cells (トランスジェニック幹細胞で人間の表皮全体を再生)」と題されている。「epidermolysis bullosa」は、現在のところ、不治の病と考えられている遺伝性皮膚疾患の科学的名称である。この疾患の原因になっているメカニズムは、皮膚の再生に不可欠なタンパク質を生成する遺伝子の欠陥にある。ごく軽微なストレスでさえ火ぶくれ、外傷になり、皮膚損傷によって傷口が形成されることになる。疾患の重さによっては内臓が同じように影響を受ける場合もあり、深刻な臓器不全を引き起こすことがある。この疾患は患者の生活の質を著しく損ね、7歳の少年、Hassanの場合のようにしばしば生命の危険さえ伴う。

2015年6月、Hassanが、Katholisches Klinikum Bochumの小児集中治療室に運び込まれた時には全身の表皮の60%が失われていた。Katholisches Klinikum Bochum, University Children’s HospitalのConsultantを務めるDr Tobias Rothoeftは、「Hassanは敗血症にかかり高熱を出していた。体重は17kg (37 pounds) にまで落ちており、生命が危険な状態だった」と述べている。保存療法も外科療法もすべて効果がなかった。予後不良であったことから、Bochumの小児科医と形成外科医のチームは、University of Modena, Center for Regenerative Medicineの教授、Dr. Michele De Lucaとの協同で、遺伝子組み換えした表皮幹細胞を移植するという実験的な治療法に最後の望みを託した。皮膚生検で患者から採取した幹細胞をModenaの研究室で処理し、採取した幹細胞に健康な遺伝子を移した。チームは、この作業において、遺伝子を挿入するために特に改造されたウイルス粒子、いわゆるレトロウイルス・ベクターを利用した。

 

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