糖鎖を合成する場合、最も簡単におこなえる方法は糖鎖合成酵素を使った方法である。 酵素合成の場合、基質特異性があるので、基質と酵素を混ぜるだけで、目的物ができる。 また、生体内で微量にしか発現していないような糖鎖であっても、構造さえ分かれば、酵素を組み合わせることで迅速、簡便な合成が可能である。このように、酵素の組み合わせにより(結合様式、結合位置の違い)、多種類の糖鎖を合成することが可能な点は本手法の最大の利点である。

この他にも有機反応を使った糖鎖合成法がある。この方法の場合、基質となる物質は単糖であり、糖鎖合成酵素を使った方法と異なり、原料が高コストとなることは無い。また、gオーダーで合成も可能である。特に日本では糖鎖の有機合成研究の歴史が長く、いろいろな方法が開発され、現在も世界のトップを走っている。しかしながら、糖には結合に関与する水酸基(グルコースの場合5カ所)が複数存在し、目的の結合位置(1-2,1-3,1-4,1-6結合)に、目的の結合様式(α、β)でつなごうとした場合、結合させる部分以外の水酸基をある種の保護基で「ブロック」した上で、結合する部分を「活性化」し、縮合させることで、はじめて1段階目の反応が終わる。 

生体資材を使ったヒト型糖鎖調製法は切り出し条件の違いによって2種類ある。第一に、糖鎖水解酵素を使って糖タンパク質から糖鎖を切り出すことでヒト型糖鎖を調製する方法があげられる(図3)。糖タンパク質上に発現している糖鎖の構造情報は、1980年代以降、多くの研究者によって精力的に研究されてきたので、どの糖タンパク質を使えば、必要な糖鎖を入手できるかが事前に分かる。 

第2の切り出し法は無水ヒドラジンを使う化学的な方法である。無水ヒドラジンで糖鎖を切り出す場合、基本的に化学反応であるため酵素の様な基質特異性もなく、糖タンパク質上に発現しているすべての糖鎖を切り出すことができる。また、糖タンパク質などの生体資材から直接糖鎖を切り出すため、酵素に比べてコストが低く、このため実量(mgオーダー以上)の糖鎖調製が可能である。 

このように糖鎖の合成(調製)法には、決定的な方法はまだ存在しない。では、これらの方法をどのような指標で選択すればよいのだろうか。おそらく必要な糖鎖の種類と量から考えるのが最も簡単である。質量分析装置やHPLCの標準物質として使用するのであれば、酵素を使った合成法でよい。糖鎖を酵素の基質として使いたいのであれば、無水ヒドラジンを使った糖鎖調製法がよいであろう。 

著者:中北 愼一

香川大学

総合生命科学研究センター

糖鎖機能解析研究部門

准教授

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