
前回述べたように現症診断にまだ多くを頼っている臨床の現場と、ゲノムから解析されたバイオメカニズムを用いターゲットを予想して科学的に開発された医薬品の間に、まだまだ大きな谷があって、そこを科学的に結びつけることがまだ十分でないためにその谷を埋めることが出来ないのが現状ではないでしょうか。
そのためには何が必要なのでしょうか?私は臨床の現場で起きている現症を分子レベルで解明することが非常に重要になっていると考えています。そのためには臨床試料を用いた臨床プロテオーム解析やメタポローム解析手法と最新の分析技術、更に最近のIT技術を応用したAIやマシンランニングの手法を総合的に活用して臨床現場で起きている現症を科学的に解明していくことが必要であると思うのです。
そこで、この点をはじめに臨床試料を用いた臨床プロテオーム解析から詳しく説明することにします。
その代表例としてアストラゼネカ社が上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤イレッサ(非小細胞肺癌治療薬)を合成・開発した際に、現在一緒に仕事をしている聖マリアンナ医科大学特任教授の西村先生たちは、臨床試料を用いるタンパク...