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自然免疫研究の再出発:TLR (toll like receptor: トル様受容体)の発見

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  著者:  作成:2010/8/17 17:42:18

獲得免疫は利根川進先生の抗体の遺伝子再構成の解明や、TCR (T cell receptor: T細胞受容体)の解明など、分子生物学的手法により華々しい成果を上げてきた。一方、自然免疫は獲得免疫と比較して、抗原認識が曖昧である、特異性が低い、などの点から特異免疫に比べて、研究の切り口が無く、科学的研究対象になりにくいものであった。そのため、マクロファージの研究者は少数派として、実に肩身の狭い思いをしていた。
ところが、1997年のMedzhitovらがショウジョウバエ成体で自然免疫応答を誘導するTollのヒトでのホモログToll like receptor (TLR) が自然免疫応答を誘導することを発見したこと(ref. 1)は、自然免疫研究のエポックメイキングであった。1998年にはTLRがリポポリサッカライド(lipopolysaccharide: LPS)の受容体であることが発見された。その後、審良静男先生がTLRシリーズのノックアウトマウスを生みだし、これまで解析出来なかった自然免疫の世界を一変させた。TLRファミリーが次々と細菌やウイルス由来の物質を認識する受容体であることが見いだされ、シグナル伝達機構が明らかになり、これまでの霧が一気に晴れる状況となった。例えば、国立予防衛生研究所の徳永徹先生の結核菌由来の免疫成分の話であるが、結核菌には細胞壁のペプチドグリカンや遺伝子(DNA)が免疫活性を有するという報告である。それまで遺伝子は大腸菌もヒトもそれほど変わるはずないとする常識からはDNAが免疫を活性化するとは、俄に信じがたいものであった。その後、徳永先生は非メチル化CGを含むパリンドローム配列に免疫活性があることを見いだし、CpGモチーフという概念が提唱され、ついにTLR-9がその受容体であることが明らかとなり、多くの研究者がようやく納得することとなったのである。

グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)は最も微量で免疫を活性化する物質の一つとして知られている。筆者らは、わずかに1ngのLPSをマウスに静脈投与しても免疫応答が見られることを経験している。LPS自身は脂質とリン酸と多糖の複合体であり、食べても全く無害なものである。ところが、注射すると、このような微量でも強い免疫反応を引き起こす理由が謎であった。現在では、このメカニズムとして、図に示すように、生体内にLPSが入るとLPS binding protein (LBP)という血清タンパク質と結合し、極めて効率よくマクロファージなどの膜表面に存在するCD14に運搬される。そして、CD14からTLR4とMD-2の複合体に渡され(ref. 2)、TLR-4の細胞質内で会合しているMyD88へのシグナル伝達が引き起こされ、複数の細胞質内タンパク質の制御を介して、核内に情報が伝達されることが見いだされている。
このシステムが如何に高感度化を達成しているかと言えば、例えば、細胞を用いた試験では、LPSは自然免疫活性化物質としてよく知られているβグルカン(グルコースがβ結合した多糖体で、キノコや、海草の主要な免疫賦活物質)やペプチドグリカンに比べて、100-1000倍も少量で同等の反応を誘導出来るのである。まさに桁違いの高感度検知システムを準備しているのである。

1) Medzhitov R, Preston-Hurlburt P, Janeway CA Jr. A human homologue of the Drosophila Toll protein signals activation of adaptive immunity. Nature 388:394―7. 1997
2) Gay NJ, Gangloff M. Structure and function of Toll receptors and their ligands.Annu Rev Bioch...

 

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