
こんにちは! 質量分析屋の髙橋です。
最近3回に亘ってイオン化について書いています。EI, CI, FDに続いて今回はFAB。質量分析はイオンを分析する方法なので、何か測定したい試料(その中の特定の成分)がある時、先ずはそれをイオン化しなければマススペクトルを得ることが出来ないので、質量分析の基本は、先ずはイオン化な訳です。
前回のFDと今回のFAB、今質量分析計を使っている人の中で、この2つのイオン化を知っている人あるいは実際に使っている人(使える環境にある人)はかなり少ないと思いますが、知識として知っていても損はないでしょう。私自身、前職である日本電子ではFABは頻繁に使っていましたが、最近では殆ど使うことがなくなりました。 FABはfast atom bombardmentの略、日本語では高速原子衝撃法です。
FABイオン化は、現在汎用的に使われているイオン化法の中では、MALDI(matrix assisted laser desorption ionization、マトリックス支援レーザー脱離イオン化)に似ています。イオン化促進剤としてマトリックスウを使うこと、真空中のイオン化であること、金属製のターゲットに試料とマトリックスを混合して塗布すること、の3点は共通しています。マトリ...