ヒトY染色体が絶滅することはない

2012
12月 24
(月)
15:20
遺伝子研究のライフサイエンスニュース

ヒトY染色体が絶滅することはない

ヒト生物学を構成する原則が過去2500万年もの間、実質的に無変化のまま存在している。と、判明した場合、それはこれからも変わらないと自信をもって言えるだろう。ホワイトヘッド研究所の科学者たちが行った最新のヒトY染色体進化論の研究結果は、Y染色体が無くなる事はないと証明している。「Y染色体消滅論」の支持者たちは、Y染色体が将来絶滅するであろうと予測している。Y染色体は過去3億年間に100以上の遺伝子を失っているため、このまま続けば必然的に全ての遺伝子が無くなるであろう、というのだ。ホワイトヘッド研究所所長、デイビッド•ペイジ博士と研究チームはこの10年間、着実に「Y染色体消滅論」を否定する研究を行ってきたが、周囲の認知効果は無に等しかった。「この10年間Y染色体について学界で合意されていた仮説は、いつかは消滅するものである、という論説です。この説をバックアップする確かな証拠が一度でも出たかどうかは別として、Y染色体消滅論はあっと言う間に広がり、定着してしまったのです。この消滅論については、わざわざ話題にあげる事が無いほどに浸透しており、我々のY染色体研究には逆風でもあったのです。」と、ペイジ博士は説明する。本研究結果のおかげでペイジ博士はY染色体消滅論支持者たちにチェックメイトをかけることが出来たのだ。
 

本研究チームは、アカゲザル(ヒトの進化経路から2500万年前に分岐した旧世界ザル)のY染色体をシーケンシングし、ヒトおよびチンパンジーのそれと比較し、驚愕する結果に至った。2012年2月22日付けのネイチャー誌オンライン版に記載された本研究結果は、進化分岐点からのアカゲザルとヒトのY染色体の顕著な遺伝的安定性を示している。この知見の重大性を理解するためには、歴史的コンテキストを知らなければならない。性染色体になる前のXおよびY染色体は、他の22対のような常染色体であった。遺伝的多様性の維持、そして有害な突然変異を排除するため、常染色体は互いの遺伝子を交差させる。しかし約3億年前、Xの一部がYと交差しなくなったことにより、Y染色体の遺伝子が急速に減衰していったのである。その後数億年間でさらにXの4つもの部分(ストラータ)がYと交差しなくなった。これによるYの遺伝子損失は大きく、先祖常染色体対が共有していた600ものヒトY染色体遺伝子は今ではわずか19遺伝子しか残っていないほどだ。

「Yは早い段階で急激な減少を遂げ、遺伝子は急速に失われていきました。しかしその後減少は安定し、今では何も問題ありません。」と、ペイジ博士は語る。問題無いとはどういうことなのか?まずアカゲザルのY染色体は、ワシントン大学医学部およびベイラー医学カレッジシーケンシングセンターの技術者たちの協力により完成し、Y染色体が過去2500万年間で先祖遺伝子を一つも失っていないことが判明した。それに対しヒトY染色体は同期間中、先祖遺伝子を一つ失ったが、その損失は全染色体のわずか3%を占める部分で発生したのである。このような発見により、Y染色体の進化は、急速な減衰に続く厳密な保存として特徴付けることが可能である。

「我々はY染色体進化の謎を解くこの明快な方法を、とても慎重に開発し、実践してきました。これから我々の経験的データはその他の論説を否定していくことでしょう。アカゲザルのY染色体が遺伝子を一つも損失していないこと、そしてヒトY染色体が損失した遺伝子はわずか一つであるということは、Y染色体が無くなる事は無いと示しています。」と、ペイジ博士研究所研究員、ジェニファー•ヒューズ博士は語る。ヒューズ博士の研究はヒトおよびチンパンジーのY染色体を比較し、ヒトY染色体が最低でも600万年間安定していることを示した。「このデータがあれば、私はどんな議論にも立ち向かいますよ。」と、ペイジ博士は語る。

[BioQuick News: Human Y Chromosome Not Headed to Extinction] [Press release] [Nature abstract]


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niimi  投稿日時 2012/7/4 9:11
へー。
よくわからないけど、もしなくなると不都合があるのかなあ。よくわからないなあ。必要だから残っているんじゃないのかなあ。オスは必要と思っていたけど、必要じゃないんだろうか?
わなんないなあ。
まあなくならないデータで安心した。
稲川裕之  投稿日時 2012/3/7 15:39
驚きました。Y染色体の話は学生の受けが良いので、人類滅亡説としてよく話していましたが、修正する必要がありそうです。ですが、そうすると、Y染色体の遺伝子は成熟しており、進化は止まった状態ということで、それをネタにします。


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