
こんにちは。質量分析屋の髙橋です。2020年最初の話題です。
お仕事で質量分析に携わっている皆さんは、マスディフェクト値と言う用語を知っていますか。マスディフェクト値とは、日本質量分析学会が発刊しているマススペクトロメトリー関係用語集では、“ノミナル質量からモノアイソトピック質量を差し引いた値”と定義されています1)。
例えばベンゼン(C6H6)では、ノミナル質量は78、モノアイソトピック質量は78.04695ですから、マスディフェクトは-0.04695となります。また、同じ芳香族化合物であるアントラセン(C10H14)の場合、ノミナル質量は178、モノアイソトピック質量は178.07825ですから、マスディフェクトは-0.07825となります。つまり、当然ですがモノアイソトピック質量の小数点以下の数値が大きいほど、マスディフェクト値は小さくなります。
通常の有機化合物の主な構成元素は、C, H, N, O, P, S, Clなどであり、CとHを中心としてそれ以外の元素が含まれる場合が多いと思います。それぞれの主同位体の精密質量は、12.000…, 1.007825, 14.003074, 15.994914, 30.973761, 31.972071, 34.968852であり、整数で近似した質量(質量数...