
こんにちは。質量分析屋の髙橋です。
これまで、“質量分析計による測定の基本はイオン化にある”というテーマで種々のイオン化について書いてきました。今回から複数回にわたって、現在LC/MSで汎用的に用いられているエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionizatio, ESI)について書いてみます。
ESIの開発によって、LC-MSは実用的な装置になりましたが、エレクトロスプレー(ES)イオン源が最初からLC-MSに用いられていた訳ではありません。
今回は、私の知る限りという限定付きですが、ESイオン源に関する変遷について書いてみたいと思います。
市販のESイオン源を最初に開発したのは、Analytica of Branford(AB)という会社でした。1990年代の中頃のことだったと思います。当時、質量分析計の主なメーカーは、LC-MSのイオン源としてサーモスプレーをもっていました。
AB社は所謂サードパーティーで、各質量分析計メーカーにESイオン源を供給していました。初期のESイオン源の構造を図1に示します(詳細は正確ではないかも)。
図1 初期のESイオン源