
血清中の抗体は抗原分子を結合していないはずです。
いや、『抗原分子をゆるく結合しうる』と表現したほうが正確でしょう。
それも、多様な抗原と弱く結合する分子の混合物です。
したがって、抗原と接しても凝集したりせず、通常は血中で悪さをしないと考えられます。このような個体から抗体遺伝子を採取し、可変領域のライブラリーを作ったとします。
例えば、重鎖と軽鎖をつなぎ合わせた一本鎖ファージのライブラリーです。目的の抗原とファージを混ぜて、スクリーニングを繰り返すと、しっかりと結合するファージを単離できます。
単離したファージをたくさん増やして詳細に調べると、ほどほどの結合定数で結合の特異性も確認できるので、特異的な一本鎖抗体(scFv, single chain Fv)が採れたと断定します。ところが、このscFvの配列をもとに人工抗体を作成し、抗体医薬を目指して検証を進めても、いまひとつ結果が思わしくないです。
大事なことを忘れているのです。 抗体と抗原の結合は、一義的ではないのです。非感作ライブラリーから苦労して単離した抗体は、抗原分子をゆるく...
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