抗体書籍の著者による抗体基礎知識 「一本鎖抗体は是か非か」 - 抗体よもやま話

一本鎖抗体は是か非か


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  著者:  作成:2015/7/27 10:00:00

大海 忍

分子生物学的技法をもっていて様々な抗体をつくりたいと思うとどうしてもここへ行き着くようです。一本鎖抗体(scFv, single chain Fv)は、抗原との結合に必要な抗体遺伝子の部分(重鎖と軽鎖の可変領域、それぞれ VH と VL)をリンカーを介して繋げた断片としファージに組み込んだものです。


通常は、抗体産生細胞である B リンパ球の集団から調製しますが、ここから様々な抗体を単離したいので、正常な(無感作の)動物由来の B 細胞を用います。


スクリーニングを繰り返して抗原に結合するファージをとってくると、確かに特異性のあるものがとれてきます。結合実験をすると、ほどほどの強さのデータもとれます。世に出ている一本鎖抗体の論文は大部分がこのようにして生まれています。


そんな良い方法があるならばこれまでの抗体はすべて scFv に取って代わられるかといえば、そうではなく、動物を免疫して通常の方法で作った抗体の方がずっと使い勝手が良いのです。


この理由、考えてみませんか。

 

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atsushi_takayanagi  投稿日時 2015/12/11 17:32

大海先生
>これらのコンパクト抗体は一価なので抗原とのアフィニティーが低くスクリーニングで苦労するとのことですが、
 いえ、スクリーニング自体はタンパク抗原等では容易です。しかし、その中から高親和性抗体を濃縮・選別する方法が案外難しいというか面倒です。この辺はいろいろとノウハウ的なものがあります。通常欠失クローンの方が大腸菌に負荷がかからないせいかphageの増殖が早いのでパンニング(抗原での選抜>大腸菌での増幅)を行いすぎると親和性の弱い欠失クローンばかりになることもあります。また得られたクローンによるELISAのシグナル強度は、培養上清に含まれるファージ量にも寄りますので親和性の指標にはなりません。このため親和性の高いクローンを選抜するにはファージを含む大腸菌上清という汚い溶液でも分子間相互作用を測定可能な機器を使うのが早道です。商業的に行っているところは得られたクローンの親和性を上げるため変異を導入する手法を併用しているそうです。
なお親和性の低いscFvしか取れなかった場合は、多量体化タグを付けてしまう力業もあります。
 また、scFvライブラリーのようにhelper phageを使うものは実際の抗体提示率は以外に低く<10%であること(ほとんどはscFvを提示していないphageであること)も気に留めておいた方が良いかもしれません。スクリーニング効率を向上するため、抗体提示率を向上させる方法も複数報告されています。
 最近はファージディスプレイの方法論的な報告は減っていますので、成熟した技術になりつつあるのでしょう。その割はあまり広まっていないような。。まあ良いライブラリーを作るのは面倒ですし、あるいは発現ライブラリーなので増幅し過ぎると劣化しやすい欠点もあるからでしょうか(=大量に配布できない)?欲が出るからか?
 なお in vitro での抗体作成の魅力としては、動物を免疫する方法では出来ない効果的なサブトラクション(似ているものには結合しない抗体)や逆に異なる抗原上の共通エピトープに結合する抗体を得ることが可能な点もあります。

ohmiS  投稿日時 2015/12/7 16:00

実験をされているかたからのコメントは本当に貴重です。ありがとうございます。私は scFv をとことんやっていないので良さも欠点についても知らないことばかりですが、いろいろと問題点があるわけですね。それから本来の抗体により近い Fab ライブラリーは魅力的です。これらのコンパクト抗体は一価なので抗原とのアフィニティーが低くスクリーニングで苦労するとのことですが、抗原濃度を高めるとなんとかなるような気もします。例えば、ファージディスプレイを利用すると合成ペプチドを使ったときと比べて格段に結合が見えてきます。

一本鎖抗体や Fab ライブラリーをはじめとする in vitro での抗体作成の魅力は、一見手間がかからないことと免疫動物の力を借りないのでブラックボックスが存在しないわかりやすさなのかもしれません。一度ライブラリーを作ってしまえば色々な抗体に活用できるという意識は、かつての 分子生物学領域での cDNA ライブラリーの発想でしょうか。私も苦労して作った質の良い cDNA ライブラリーから次々とクローンを単離できた覚えがあります。しかし、抗体産生については、私たちがまだこれから学ぶべき仕組みがあるはずです。モノクローナル抗体は、良い抗体が取れてしまえば途中のことは重視されません。せいぜい、スクリーニングをどうやったかなど私たちが把握できている実験過程を振り返るくらいです。動物内での抗体分子の設計がどうなっているかは、 基礎研究レベルで追求してほしいものです。

引用:


atsushi_takayanagiさんは書きました:
大海先生、毎回楽しく読ませて頂いております。自前でライブラリーを作製しscFvを使っている者です。
scFvの使い勝手が悪い点で、ざっと思いつくのは(1)scFvの検出に通常tag抗体が必要で手間が増えること、(2)scFvタンパク自体を調製する手間がそれなりに必要なこと、(3)親和性がほどほどな物が多く多価にしない限り抗原の検出感度が低いこと、(4)Fab,IgG型に変換すると親和性が落ちるVH/VL遺伝子があること(その場合scFv-Fcという手もあります)、でしょうか。逆にmAbのVH,VL遺伝子を利用してscFvに変換すると親和性が低下する場合が多いのでこちらも注意が必要です。
なお、高親和性抗体を取るためには、ライブラリーの質(レパートリー数も含む)の向上・スクリーニング法の工夫が必要だと経験上思います。
総じて、scFvはin vitroで抗体スクリーニングするメリットを生かさないと手間がかかる代物だと思います。
なお、自前でライブラリーを作ろうと考えている方には(4)のことを考慮してscFvではなくFabライブラリーを私はお薦めします。もっともFabよりscFvの方が一般的に収量が多いこと、改変が容易なことなどもありますので使用目的により選択すべきでしょう。

atsushi_takayanagi  投稿日時 2015/11/29 18:02

大海先生、毎回楽しく読ませて頂いております。自前でライブラリーを作製しscFvを使っている者です。
scFvの使い勝手が悪い点で、ざっと思いつくのは(1)scFvの検出に通常tag抗体が必要で手間が増えること、(2)scFvタンパク自体を調製する手間がそれなりに必要なこと、(3)親和性がほどほどな物が多く多価にしない限り抗原の検出感度が低いこと、(4)Fab,IgG型に変換すると親和性が落ちるVH/VL遺伝子があること(その場合scFv-Fcという手もあります)、でしょうか。逆にmAbのVH,VL遺伝子を利用してscFvに変換すると親和性が低下する場合が多いのでこちらも注意が必要です。
なお、高親和性抗体を取るためには、ライブラリーの質(レパートリー数も含む)の向上・スクリーニング法の工夫が必要だと経験上思います。
総じて、scFvはin vitroで抗体スクリーニングするメリットを生かさないと手間がかかる代物だと思います。
なお、自前でライブラリーを作ろうと考えている方には(4)のことを考慮してscFvではなくFabライブラリーを私はお薦めします。もっともFabよりscFvの方が一般的に収量が多いこと、改変が容易なことなどもありますので使用目的により選択すべきでしょう。

Happy  投稿日時 2015/8/5 9:27

ある癌マーカーとしての蛋白質がみつかりそうです。適切な抗体をどこかに作成お願いしたいのですが、何かヒントをいただけますか?



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