バイオ研究コラムプロテオミクス研究は探索から機能解析へタンパク質同定法(1) - バイオマーケットjp

タンパク質同定法(1)

プロテオミクス バイオマーカー 質量分析 


 >  バイオ研究コラム  >  プロテオミクス研究は探索から機能解析へ  >  タンパク質同定法(1)

  著者:  作成:2010/1/11 17:15:01

最初にエドマン分解を利用したプロテインシークエンサーによるタンパク質同定法について述べたい。プロテインシークエンサーではN末端のαアミノ基をPITCで修飾することからエドマン分解が始まるので、N末端αアミノ基がフリーでなければならない。プロテインシークエンサーではタンパク質を電気泳動後にPVDF膜に転写できれば、10ピコモル程度でN末端から10残基程度のアミノ酸配列を決定することは比較的容易である。しかしながら、自然界の多くのタンパク質はN末端が修飾されているので、プロテインシークエンサーで配列を決定するためにはプロテアーゼでペプチド断片を調製する必要がある。

エドマン分解で得られるアミノ酸配列は結論的な結果であるので、質量分析全盛の今でも用途を選ぶことで非常に有用な解析手法である。タンパク質の正確な配列決定に加えて、限定分解部位の決定や糖鎖などの修飾部位の特定に有用である。さらにアミノ酸配列のβ転移有無の確認やタンパク質の純度検定にも利用できる。

さて、プロテインシークエンサーでうまく配列決定するためのポイントは、サンプルの純度である。ひとことで純度といっても、多くの要素が含まれる。例えば、目的タンパク質の純度、電気泳動で単一にみえるバンドであっても別のタンパク質が含まれていれば複数のアミノ酸が検出されて配列決定が困難となる。さらに、N末端アミノ酸が均一であること。目的タンパク質が高純度であっても、プロセッシング等によりタンパク質のN末端が不均一になっていることはよくある。この場合も複数のアミノ酸が検出されて配列の決定が困難になる。

次に人為的なコンタミネーションの例を挙げる。電気泳動で単一のバンドをPVDF膜へ転写、染色・脱色、切り出しの操作中にケラチンが汚染することがある。また、電気泳動後の操作に使用する容器をウエスタンブロッティングと併用していたために、カゼインやアルブミンが汚染されていたという例もある。このような汚染を避けるために、試薬、ガラス板、容器などのすべてについて配列分析専用とすべきである。より高感度な質量分析ではさらに気を付けなければならない。

また、電気泳動中にN末端が修飾される可能性がある。これを避けるために、作成したゲルはすぐに使用するのではなく翌日以降に使用する。陰極側の泳動バッファーにチオグリコール酸ナトリウムなどのラジカルスカベンジャーを加えることで、N末端の修飾反応を抑制する。この場合、システイン残基のアクリルアミド付加反応が抑制されることに留意すべきである。

現在ではプロテインシークエンサーを使って、10ピコモルのサンプルがあれば10残基程度の配列は十分に決定することが可能である。あとは分析者の腕によって、1ピコモルの配列決定ができたり、解析不能データから配列が決まったり、数十残基の配列が読めたりするから不思議である。このためにも日々の装置のメンテナンスを怠らず、装置のクセを知ってデータを読みこなす経験とノウハウを蓄積する努力が大切である。

最後に、決定した配列をデータベース配列に対してホモロジーサーチを実施することでタンパク質を特定する。データベースに登録されていないタンパク質の場合...

 

続きを読む
ログインしてください

    この記事が役に立つたらぜひシェアしてください!
    このエントリーをはてなブックマークに追加


    タンパク質同定法(2) »



    友達にメールで勧める友達に伝える

    投票数:37平均点:5.95

    おすすめ製品・サービス

    Xevo G2-XS QTof四重極飛行時間型(QTof)質量分析計
    高性能ベンチトップ型QTof質量分析計により糖タンパク質をすべての構造レベルで解析! 高性能ベンチトップ型QTof質量分析計 Xevo G2-XS QTofをRapiFluor-MS標識試薬と組み合わせることで、前例のない MS および MS/MS 感度を実現し、微量の糖鎖成分までを容易に、より高い信頼性で同定します。 さらに、糖タンパク質プロファイリング、サブユニット解析、糖ペプチドマッピング ...
    ohmiS  投稿日時 2015/7/21 13:45
    そうなのです。プロテインシーケンサーは絶対に必要なのです。スループットや検出感度が悪くても質量分析計で決められないところをやってくれるのです。エドマン分解を復活させるテクノロジーを考えましょう。
        運営会社:バイオアソシエイツ株式会社

        バイオマーケットjpは、ライフサイエンス研究者・バイオビジネス関係者のための会員制サイトです。

        ユーザー登録すると...

        コンテンツの全文表示・コメント投稿・各種お申し込み・ダウンロード等、

        様々なユーザー専用機能をご利用いただくことができます。

         

        ユーザー登録は1分で完了

        ユーザー登録は無料

        運営者:バイオアソシエイツ株式会社

          登録ユーザー数
          2966人
          2018年04月22日 現在
          36 人のユーザが現在オンラインです。 (1 人のユーザが ライフサイエンスレポート を参照しています。)
          登録ユーザ: 0 ゲスト: 36
          BioQuick ニュース

          BioQuick Newsは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中の生命科学関連のニュース・トピックスをタイムリーにお届けします。BioQuick Newsは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
          BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill.

          抗体よもやま話
          創薬よ何処へ
          アクセスカウンター
          DATEVisits/PVs
          2018/04/22:688/5893
          2018/04/21:719/18607

           

          クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
          バイオマーケットjpのコンテンツは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。引用される場合は出典元リンクの記載をお願いします。